前回のお話
イチイさんが外出中、てんやわんやだったオウギさんたち。
閉店後にも粉薬を調剤室にぶちまけ、大パニック。
イチイさんが外出先から戻ってくる前に、大慌てで清掃です。
「すごいクマ作ってんじゃん。忙しかったのか?」
「ええ、まあ」
勘がいいイチイさんは何かを感じ取ったのか、薬局内を見回しています。
「その割にはなんだか薬局内がきれいだな。掃除する暇があったみたいじゃん」
ぎくりとする薬剤師たち。
「いや、閉店後の店内清掃ですよ。」
「今日はずい分、熱心にやったんだな。新築みたいだぞ。んで、俺が置いていった心を癒すグッズはやけに、握りつぶれてるな。お前はきれいにしてもらえなかったのか?」
「そのグッズいいっすね。触り心地良くって、みんなで触っちゃって。はは」
「まぁいいけど、使ったら顔、ちゃんと戻してやって。可哀想だろう?」
「はい。心がけます」
イチイさんは再び店内を見回しています。
「さっきから気になってたんだけど」
「な、なんでしょう」
「…調剤室に置いてあった俺のマグカップに、砕けた薬が入っている」
「!!」
「いや、それは」
「ああ…」
慌てるチョウジさん、ロクジョウさんを遮るように、オウギさんが口を挟む。
「イ、イチイさんっそれやばいっすよ。調剤室にマグカップ置いておくなんて!保健所の監査の人たちがきたら怒られますよ。調剤室は飲食不可なんですから」
「そ、そうですよぉ」
「監査?薬の話をしてたのに、問題をすり替えられているような気がする」
「ほら、早く!調剤室からマグカップを出さないと。俺、洗っておきますよ」
「成長したよな。なんだかんだで。問題も自分たちで解決できるようになったんだろうな。まぁまだ未熟だけど」
「はい?」
「じゃあ、後でマグカップだけじゃなく、ミルも洗っておけよ」
「…はい?」
イチイさんは、疑念を抱いていたことについて、それ以上追求しないことにしたようです。
「これやる」
「なんですか?食べかけ?ポ村の…梅のど飴?」
「ありがとうございます。いただきます」
「ん?うまっ。さわやかっ」
「疲れがとれますね」
「それお前らの今月分の給料。それ渡すために、戻って来たんだぞ」
「まじですか?」
「イチイさん、じゃあこれ返却してもいいですか?」
「お前のマグカップに、入れてとっておいてやるよ。ってかお前のマグカップにも砕けた薬、入ってるけど?」
「うっ、ああ…」
「給料、いらないんだっけ?」
「いえ、お給料ありがたくいただきます。美味しいです」
「そう?じゃああと、3粒やるよ」
「5粒でお願いします」