イチイさんは、前に注文していた新薬を眺めながらむすっとしています。
「これ、この新薬ってさぁ、篠井先生に頼まれて注文したやつだよな?使うからっつってさぁ」 「あ、そうですね。そうでしたね」
チョウジさんがびくびくしながら答えます。
一方オウギさんとロクジョウさんは、仕事で忙しいふりをしているようです。
「頼まれてからだいぶ経つなー。篠井先生のところの患者、けっこう来てるよな?」
「で、ですねー」
「なのに誰にも処方されていないなぁ。いったいいつ使用するんだろうなぁ!?」
新薬を使用すると言われていたのに、篠井医師からはちっともその新薬の処方箋がこないようです。
「なぁ、いつだと思う?そこのオウギくんとロクジョウさんよぉ」
突然声をかけられて、二人は声にならないようなうめき声をあげています。
頼まれていたのに、薬の処方が一向にこない。
「はぁっ」
ため息をつくイチイさん。
「新薬を作ったメーカーに頼まれて、使う予定も無いのに処方するよう言ってきたのかもなぁ」
少しがっかりするようにつぶやきました。
「ど、どうですかね?」
「別にさぁ、いいんだよ。医者と製薬会社が癒着してたって。うちに関係ないならさ。 新薬がいい薬なんだったら、うちだってすすんで使用したい。でも誰にも処方しないんだったら在庫としていずれ処分しなければならなくなる。そうなるとうちに関係ないとはいいがたい。注文したのに使用せずに廃棄だなんて、ただただ損することになるからな」
周囲のスタッフはみんな困ったように黙っています。
「なぁ!」
「はいっ」
ぎゅっぎゅっ
ぐにぐに
「?」「なんですか、イチイさん。その変わったヘッド」
「心を落ち着かせるグッズだって。ポ村の人からもらった」
「なんか潰してる様が、こわ…」
「ん?」
「いえ、触り心地よさそうですね」
「だろ?使っていいぞ」
続きます