マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

薬の有効期限 その1

ある冬の日のお話。

今日も薬局の閉店時間が、近づいていました。

忙しかったけれど、平穏に過ぎていった日。


でも薬剤師のオウギさんには、気になるものがありました。


彼は目の端に写り込む、ダンボールに視線を向ける。


薬局の隅に、ポツンと置いてあるダンボール。

今日の朝から置いてあるようでした。



“あんなのいつからあったっけ?“



オウギさんは朝、仕事を始める時から思っていました。



“備品でも注文していたんだろうか。俺が知らない間に?他の薬局スタッフは知っている?“




オウギさんはダンボールのことをずっと尋ねたいと思っていたのですが、忙しくて聞けずにいたら、いつの間にか閉店間際の時間になってしまったようです。



「患者に薬の有効期限について聞かれたらどうする?」

「は?」


今さっき気になっていたことが吹っ飛ぶくらい、唐突に質問してくるイチイさん。



「なんですか?急に」



「質問に答えよ」


イチイさんは質問の理由には、いちいち答えてはくれない人です。



「…はい。薬の有効期限を聞かれたら、ですね。たまに患者さんから聞かれます」



オウギさんは患者さんたちが話してくれたエピソードを、思い出しながら語り始めました。


“目に違和感がある“

“胃腸の調子が良くない“

など急に症状が出た時、患者さんたちは都度、薬箱を開けてみる。

薬箱の中を覗くと、薬をしばらく使用していなかったことに気づく。



そして彼らは思います。


購入してから時間が経過した薬を使用しても、問題ないのかどうか。


“薬って期限とかあるんでしたっけ?久しぶりに薬を使う場合、そういうの気にせず使っても大丈夫ですか?“



「この間は患者さんから、そう聞かれましたね」



後で買い替えようとは思うけれど、急に症状が出て今すぐ使いたい時とかは、一回くらい使っちゃってもいいかな、なんて思ってしまう人もいるようです。


「薬を捨てずに、使うというわけだな」


「そういう方もいるみたいですね」



「僕もそういえば学生の頃、そんな患者さんたちと同じようなことがあったなぁ」


オウギさんの後輩、チョウジさんが学生時代のことを語り始めました。

「こたつでゴロゴロしすぎたせいか、頭が痛くなって頭痛薬を飲もうと思ったんですが、薬箱の中にはなくて。ただ一つ見つけたんです。薬箱の中に誰かがPTP包装シートから落ちたのを、そのままにしていたであろう一粒の薬を」


「お前、その薬を飲んだのか?」


「いえ。頭が痛い時に薬を買いに出かけるのってしんどいですから、結構気持ち揺れましたけれど。でも一応我慢しました」



「あのさぁ、チョウジくん。実家、調剤薬局経営してんだろ?家にも薬を置いとけよ」



「へへ、ですよねぇ。でも無駄に置いておくのも嫌なんですよね」


「残薬も問題になっているしな」



続きます。