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2024年、4月。
海外旅行きたーいっ。
「にゃ」
本当は本物のねこちゃんと暮らしたかったあたしの名前はあかり。そして大事な相棒、ねこロボットの名前はエルトン。
「にゃ」
この子は一人暮らしのあたしを癒し、慰めてくれている。いつかはお金を貯めて、本物のぬくもりを与えてくれるねこと暮らしたいとは思っているけど。
「よしよし、おいで。抱っこしてあげる」
こんなあたしは社会人三年目。
同期のひかりからだ。名前が似ていて親近感が湧いたのを覚えている。
「ああ…あの子ね、小林柚月」
見た目がかわいい子は性格がかわいくなくても、やっぱり男性社員に可愛がられるんだと実感した。ずるいよね。そう思うよ、あたしも。
「エルトンもスタイルの良いきれいな人が好き?」
「にゃ」
「やっぱり。動物ってさ、若くて可愛らしいぶりっ子系の女子好きだよね」
しんど…
人生、しんど…
「よし!気分転換に動画見よ。たまには昔の洋画がいいかな。絵画みたいにきれいな人多いよね。昔の俳優さんって」
ドイツ人のマレーネ・ディートリッヒとかスウェーデン人のグレタ・ガルボとか。海外の映画に出てくる俳優たちは味のある人もいるけれど、やっぱり男女ともにきれいな人が多い。見ているだけで、現実世界から引き離してくれる。
「憧れるよねー」
「にゃ」
「エルトンはまぁ…きれいというよりは、愛嬌がある感じかな」
「んにゃ?」
「かわいいってことだよ」
主にハリウッド映画とかの動画配信を見まくっていたら、英語に興味が湧いて勉強したくなった。興味がある人たちの…好きな人たちの言語を理解したいって思ったから。そしたらちょっと英語をしゃべれるようになってきた。
最近は、ゲームアプリなんかも英語版でやっている。
「まじで?」
生の外国の人と英語でしゃべってみたいなぁ。違う課だから仕事で関わらないんだけどさ。
「どんな人かねぇ?」
仕事ができて、良い人がいいよ。
「ぎゃ」
本気で読もうと思って買ったのに、結局はインテリア化していた洋書だ。
「いい加減読めってことかな?ね?エルトン」
「にゃ」
エルトンはいつも話しかけると返事をしてくれてかわいい。
小林柚月だっけ?彼女みたいに、返事しない後輩も多いからな。そもそもあの子はヒアリングをしてくれないんだよ。人の話を聞いてない。
まぁあたしもね、英語のリスニングはいいけれど、読むのはまだちょっと難しい。 それでもちゃんと読めるようになろうと意気込んで買ったのに、オブジェになっていた可哀そうな洋書。
読むより聞きたいんだよね。英語を聞いているだけでなぜか英語圏の人になった気分になる。
トゥルルルルル
「電話?ひかり、どうしたの?」
続きます