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前回のお話
妖精の少女であるシルプさんは、絶賛片思い中。そんな彼女の思い人は美容師のハイエさん。
シルプさんはまるでストーカーのように、美容室の窓からハイエさんのことを見つめています。
なんか疲れてるみたい…
お仕事大変なんだろうなぁ
私が癒してあげられたらなぁ。
必要として貰えたらなぁ。
だいたい、あの女の髪の毛なんて雑草を切るみたいに、鎌でぶった切ってやればいいのに。ちょっと待って、近づいて欲しくないから高枝切りバサミの方がいいかな。
「ひっ出た村長」
「まゆさん?」
突然何かに驚くまゆさんの声。
「絵?」
「俺その人の絵、好きなんですよ」
「一瞬、村長に憧れてんのかと思った」
「ははっ。村長も好きですけどね」
「知ってます?ポ村に住んでるっていう有名な画家の人。今、都会の人にも人気らしいですよ」
「ああ、聞いたことある。てんまも好きだっていってた」
「その人の絵って自然をモチーフにした絵が多くて、なんかこう癒されるっていうか、他の世界に連れて行かれる気がするっていうか」
「ポ村にいるのにまだ自然好きなんだ。癒される…か」
まゆさんは預けていたカバンから、何やらごそごそと取り出そうとしています。
「はい、これ」
「え?」
「貰ったっていうか美容院行くならって、マメチュー先生から渡すよう頼まれてたのさ」
「マメチュー先生に?」
「そう。渡すの忘れる所だった。あとそれ一回飲んだ位じゃホントに疲れがとれるわけじゃないから、ご飯食べにおいでってさ」
「そうなんですか?行きます、行きます。ありがとうございます」
「一応客商売なんだからさ、そんなに疲れた顔してたらいかんよ?」
「やっぱり疲れた顔しちゃってます?すいません」
「でもさ、その村長の絵さ。あたしには癒されるどころか、見ていてめっちゃ疲れるんだけど」
「そうですか?」
「うん、精神的にめっちゃ疲れる。ハイエ生気吸い取られていると思う」
「まさかっ。でもまゆさんって村長さんと仲良くないです?いつも見守られてる」
「違うよ。見守られてるんじゃなくて、見張られてんの」
「ははは、そうなんすか?」
「何あれ、すっごく楽しそう」
嫉妬でイライラする。
とっとと、ハイエさんのそばを離れて!
見たくないのに、見てしまう。
心臓が潰れそう。
あたしに話してくれたときより楽しそうじゃない?と比べてしまう。
“好きな人が幸せでいてくれればそれでいい”っていう人、あれ本心?
前世、神さまか仏さまだったの?
あたしは好きな人とは…一緒に幸せになりたい…
でも今は
あの人の中であたしはまだ…