マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

インフルエンザの時の市販薬の服用  その1

ゲホッゲホッ…

「ママァ。はやくかえりたいよぉ」



「そうね。
今日は早く帰りましょうね」



熱で苦しそうな5歳の一人息子を、心配している母親のフェレさん。



(とにかく今日は早く帰って、寝かせてあげよう)




今から2時間ほど前の夕刻すぎ。



フェレさんは体調が悪そうな息子を連れ、慌てて予約を入れてから病院に駆け込みました。



そしてインフルエンザとの診断を受ける。



しかし病院を出た時にはもう、薬局は閉まっている時間になっていました。



「もう薬を受け取りにはいけなさそう…」



まだ5歳の息子もつらそうにしているし、何より早く帰りたがっている。



「家に市販のお薬があったはずよね。

いざとなったらそれを飲ませましょう」



そう考えたフェレさんは、家に帰ることにしました。

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「まゆさんこの携帯電話…

なんだか調子が悪いみたいなんですよね」



「あたしが代わりにみておきましょうか?」


マメチュー先生の携帯電話の調子が悪いらしく、チェックしていたまゆさん。



その携帯電話は、患者さんからの問い合わせにいつでも対応するため、マメチュー先生が常に持参しているものです。



休日・夜の遅い時間でも、電話が鳴ったら即対応。




携帯を預かったはいいものの、結局自分だけでは対処出来なかったまゆさんは、役場の携帯に詳しい人に確認してもらいに来ました。



「大丈夫そうですか?」



「ん~…うん!

もう問題なく使用出来ると思いますよ」




「さすがっ!
ありがとうございます」



「そうだ、まゆさん」


「はい?」



こちらがお礼をするべきなのに、役場の方がDVDを貸してくれました。



タイトル
“次々に訪れるミステリー”
まゆさんはミステリー好きです。



「わぁ、やったぁ。

遅い時間に余計なことして貰っちゃったのに…

今度しっかりお礼しますね」



現在時刻は21時すぎ。



お役所にも残業はあるようです。


一方マメチュー先生の薬局はとっくに閉店。


「役所と一緒で残業はしてるかもだけど…

携帯返すのは明日にしよう。

そんで今日はさっさと帰って、たっぷりDVDを楽しもう」



嬉しそうに帰ろうとしたところ、村長に呼び止められてしまうまゆさん。

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(そ、村長…いつから?)



「携帯直って良かったですね。

お仕事の方はどうですか?

お薬の勉強はしていますか?」



村長はまゆさんたち医療従事者に、マメチュー先生のようになって貰いたいため、日頃から色々と気にしているようです。



「えっええ…はい。順調です。

ポ村の住民のために頑張ります」



「マメチュー先生は大変ですね。

閉店後だろうと休日だろうと、患者さんの対応をしなくてはならなくて」



村長は携帯電話を眺めながら呟いています。



「あぁ、携帯。そうですねぇ」



「明日マメチュー先生に用事があるので、お渡ししておきましょうか?」



「いえ、患者さんからかかってきたら、対応しなくてはならないので」



トゥルルルルルッ


「ぎゃっ!」


噂の携帯電話が突然鳴り出す。



「まゆさん、患者さんからですか?

夜遅いのに…」



まゆさんは驚きつつも、冷静に電話にでる。



「マメクスリカフェの薬剤師まゆと申します。

本日はわたくしが対応させて頂きます」



どうやら電話の主はたまにポ村にやって来て、マメチュー先生の薬を貰いに来る若いお母さんのようです。


一人息子が高熱を出しているとのこと。



聞き耳を絶てていた村長は、事情を聞いて慌てます。



「高熱?幼い子が?大丈夫ですか?

マメチュー先生がいないというのに」


心配で仕方のない村長は、訴えるようにまゆさんを揺さぶります。

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「こんな時間に電話をしてくるなんて…

そうとう重症なのでは?

そうだ、私がかわりましょう」



「ええっ!?」



まゆさんから携帯を奪うようにして、電話に出る村長。



「もしもし、お電話代わりました。

ポ村の村長です」




「はい?村長さん…ですか?」



「はいそうです。村長です」



まゆさんはそんな村長から、携帯を奪い返します。



「いや、村長。
携帯をこちらへ」



「え?だってまゆさん…」



そして落ち着いた声で村長に声掛け。



「村長、いったん落ち着いて下さい」



「でっ…でもでもでも」




電話の相手は一人息子の熱が急激に上がり、苦しそうにしていると訴えていました。



医師にはインフルエンザと診断されたらしい。



夜中に子どものことが心配で、不安な気持ちを隠し切れない様子の母親。



“このままだとうちの子死んじゃうかもしれない”



電話口で、か細い声で呟くのが聞こえる。



少しパニックを起こしているようです。



何しろ村長も今はかろうじて冷静でいるようつとめているみたいですが、やはりちょっとパニック気味。


それでも聞き耳は立て続けています。



パニックを起こしてしまうくらい、子どものことが心配な母。



大事な一人息子なのですから、母親としては当然の心理です。



【季節性インフルエンザ】

感染者約1000万人

死亡者約1万人



「今、市販のお薬を飲ませようと思っていて…

飲ませてあげた方が良いわよね?」




「まゆさん、早くお子さんにお薬を飲ませてあげるよう伝えましょう」



「村長、落ち着きましょうって」


次回へ続きます