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「よし!」
もじもじしたり、真っ赤になったり、気合を入れたり、先ほどから百面相をしている彼女は人見知りの妖精シルプさん。
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人間に対し警戒心があるからか、マメチュー先生に対してさえ、心に壁があるようです。
妖精の少女、シルプさんにはどうやら好きな人がいるみたい。
「ああああーやっぱりだめー」
何かを覚悟したような仕草の後、今度は枯葉にまみれゴロゴロしながら悶えているようです。
好きな人を思い、悩ましい日々が続いている様子。
そんな彼女が好きな人はどんな人なのでしょう。
ドコッ
「ひゃっ!」
その直後の衝撃!
誰かがシルプさんを、突き飛ばしてきました。
「道の真ん中で邪魔だなぁ」
そんな事をする人間は…
やっぱりまゆさん。
シルプさんは、慌てて木の陰に隠れます。
「いやぁ私もさー、ちょっと毛先を整えようかなって思ってさ。女子ーってね」
シルプさん、ひょっこり出て来てまゆの服をひっぱり、にらみつけています。
シルプさんは”何お前あの人に髪切って貰おうとしてんだよっ”て顔をしています。
「何?シルプ。捕まえて鳥かごにぶち込むよ?」
「!!」
シルプさんが人間に対し警戒心が強いのは、まゆさんのせいかもしれません。まゆさんは逃げていくシルプさんの後姿を見つめながら、ぼそりとつぶやく。
「ほの字だねって?全く女だなぁ。あんな風にいちいちヤキモチ焼いてたらキリないだろうに、それが恋する乙女ってやつなんだろうなぁ」
「こんにちは、まゆさん」
美容師のハイエさんは、お客さんであるまゆさんに、柔らかい笑みを浮かべています。
ハイエさんはシルプさんの存在にも気付き、窓の外にいる彼女ににこりと微笑みかけますびっくりしたシルプさんは、恥ずかしそうに窓から顔をそらしている。
どうやら美容師の彼、ハイエさんがシルプさんの意中の人のようです。
ハイエさんは、少しクールですごく優しい男性。
そんなシルプさんとハイエさんの出会いは…
「うわっ!」
「うん、まぁ。すっごく小さいから平気だけど、ちょっと驚いた」
「ふふ、くすくす」
木の影でシルプさんが一人、キャッキャと笑っている。
イタズラは妖精さんたちのサガなのです。
イタズラをしてくすくすと笑っていたバチでしょうか。
風に吹かれた細くて柔らかいシルプさんの髪の毛が、小枝に絡まってしまいました。
本人も少し悪いことをしている自覚があったからなのか…
神さまの天罰ではとの思いが頭をよぎる。
とはいえちょっと小枝に絡まっただけ。
それなのに天罰ではという怯えに加え、痛みに弱い女の子の妖精は、必要以上に驚き怯えていました。
彼女はそのまま固まって、木の影で動けなくなってしまっている。
「綺麗なピンクゴールドの髪だね。本当の絹みたいだ」
あの人が美容師じゃなければ良かったのに…
そうすれば私にだけ微笑んでくれてるって、ちょっとくらい勘違い出来たのに。
ハイエさんのお客にも、同じ笑顔で微笑んでいる所、見なくてすんだのに…
続きます