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前回のお話
心臓に違和感があるというまゆさんの伯母さん、ペリコ。
でもお医者様に診て貰った結果、問題はなかったそうです。
「絶対心臓おかしいと思うのよ」
「お医者さんの誤診の可能性だってあるでしょう?」
確かに医師の誤診である可能性はないとは言い切れません。
「そうだろうけど…何?セカンドオピニオンでもしたいの?」
「セカンド?一応もう他の病院には行ったわ」
「ああ、行ったんだ。そしたらなんだって?」
「都会の大学病院に行ったのね。そしたらやっぱり何でもないって」
「へぇ、そう」
「近所のお医者さまなんかひどいのよ。この前なんて”何度来ても、何度調べても結果は同じ。なんの問題もない”っていうの」
「問題ないなら、いいじゃん。問題あるって言われたいわけ?」
「言われたいわけじゃないけど、絶対問題あるはずだもの!」
「ふうん」
少し思い込みが強いのでしょうか。
「あ、そうそう。実はね。黙ってたんだけどこの家、時々ラップ音がするんだよね」
「いやだ、ラ…?」
「あたしさ、霊感ないからよく分かんないんだけど、ひょっとしたら何かいるのかも」
「何よそれ。あんたよくそんなとこ住んでるわね。憑りつかれたりしたらどうするのよ」
ペリコ伯母さんは怯え、不安がっています。
”ガタン”
「あ、ほら」
「やだっ、なんなの?今の音。ほんとに幽霊?」
「ペリコ、見えるタイプ?」
”ガタッ、ゴトトン”
「また音っ!幽霊じゃないのよ!絶対幽霊じゃないの!」
「おお、霊能者。言い切るじゃん。なんか、見えた?」
「なにのん気なことを!引っ越した方がいいわよっ!」
ペリコ伯母さん、思い込んだら止まらないタイプでもあるようです。
「ペリコもわめいてないで、早く帰った方がいいと思うけどな。うん、帰った方がいい」
“カタ…”
遊びに行っていたにゃこさんが窓から帰ってきました。
「ね、ね、ね…」
「きゃー!ねこー」
伯母ペリコは猫が大の苦手。
幽霊よりも苦手。
……。
「ったく…寒いなぁ。出て行くならドア閉めてってよ」
「なんにゃよ、あいつ」
かつてねこさんから逃げようとパニクって、屋根に飛び乗ろうとした伯母ペリコ。
伯母さん…ねこさんは高い所、大好きなのですよ?
「次は心臓の状態が悪化してから相談しに来てよね」
いつまでも症状が進行しない伯母さんの心臓。
実はまゆさん。
ペリコ伯母さんから”心臓が変なの”という話をかれこれ、10年近くは聞き続けています。
まゆさんの母親より、10歳近く年上のペリコ伯母さん。
心臓が悪いと言いつつ、良く食べるし、友人ともよく遊び歩いています。
とりあえずお医者さまのいう通り、心臓に大変な事態が降りかかっているわけではなさそうですね。
それでも心臓に違和感があるのであれば、不安やストレスがあるのかもしれません。
友だちが多い人ではあるのですが、それでも家で一人、寂しいのかもしれない。
「今度、病院探しておくかな。あとペリコが好きなフランス料理でも探しておこう。ああ、でもフレンチはペリコのマナー講座がうっとうしいから、中華にするかな。思い悩む暇がない程の、激辛麻婆をこっそり頼んどこ」