マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

何も言わない毒姪

「コンビニに売ってるっていう梅昆布買ってきて。

あたしコンビニ行ったことないから、よく分からないの」



そんな鬱陶しめの事を言うのは「毒親戚」という記事で登場した伯母のペリコ。



自覚なく、人のカンに障る事を言ってしまうタイプでもあります。



「あんた太ったんじゃない?」


「この芸能人が好きなの?
あたし苦手だわぁ」


良くも悪くも、自分に素直な人ではあります。



そんな人の心に毒を与え気味のペリコですが、その毒に拮抗…いや凌駕するほどの毒を持つポいも。



この二人、性格が合わずお互いの対応に問題があります。



ペリコというのは身内や友人だけにではなく、店員さんにも思ったことを言ってしまいます。



「これおいしくないわね」


味のことも店員さんの前で、素直に言ってしまいます。


ポいも、ポあねは共に
「店員さんの前でそういうこと言わないで」
と注意をするのですが、どうにも伝わらないようです。


飲食店でも、ピーチクパーチクしている伯母ペリコ。



そんなペリコがある日、店員さんにビールをかけられてしまいました。


そこはデパートのお洒落カフェ。

周囲は女子ばかり、そして満席。

少しだけ並んでから入るようなお店です。



店内に入店して間もなく、ペリコの隣のお客さんがひょいと椅子を引く。

その瞬間。

背後にビールを持った店員さんが…


“あ、ぶつかる”

全てを目撃出来る位置に座っていたポいも。


予見した通り、お客さんの背後にいた店員さんにぶつかり、すぐそばにいた伯母のアウターに見事ビールがぶっかけられてしまったのです。



“やば…”


ポいもは、このあとの展開を予想します。


そして思った通り、店中にペリコのピーチクパーチク声が響き渡る。


「ちょっと何してんのよ!!

どうしてくれんのよ、これっ!!」


「クリーニング代お支払いしますので」


「当たり前でしょっ!!」


さすがにビールをぶっかけられたら、怒るのは仕方がないと思います。


でも店がペリコの舞台かのように、大声で騒ぎまくっている。

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もっと穏便に事をすすめられないのかなぁ、この人……。


そう思いつつも今それをペリコに言うと、もっと感情がヒートアップしてしまい、事が悪化してしまうかもしれない。


大抵の人はそうかもしれませんがペリコも自分の味方をしてくれないと、機嫌が悪くなる。


このトラブルを長引かせたくない。



“ペリコ大丈夫?”

などと声をかけてあげるのがいいのでしょうけれど、キーキー店員さんに文句を言うのに夢中なペリコに、何か声をかけてあげる気がどうしてもおきない。



“無……”



その時ポいもがとった行動と言えば無反応、無表情……。



眉一つ動かさず、

言葉一つ発せず。



私たちは店内で騒いでいた客だった為、恐らく注目されていたとは思います。



大騒ぎするペリコと、仏像のように無反応な連れ、ポいも。

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周囲にどう思われていたのでしょう。


その答えはすぐに出ました。



先ほど椅子を引いてしまった隣の席の、若くて可愛らしいお嬢さんがこちらを見ている。


わざとポいもと目が合うまで、こちらを見ていたようです。



そのお嬢さんは、ポいもと目が合ったのを確認した直後……。



ポいもの前でペリコに
「大丈夫ですか?」
と優しく声をかける。



“あらまぁ”



なんと優しく、正義感のあるお嬢さんなのでしょう。



“母親(だと思っていると思う)が大変な目に遭っているのに、何も思いやらないクズな娘っ!”

とでも思ったのでしょうね。


とてもまっとうで、正しき反応。



その頃、ようやくペリコの気が収まったようで、席に座り直していました。



「全くやんなっちゃうっ!

そう思わない?」



「ねぇ…

この間ポいもが声もかけず、何にもペリコに関わろうとしなかったこと、気付いてる?」


「あっ、そう言えばそうよっ。

全くあんたったら、薄情なんだから」



普通の人ならまず、自分を思いやって貰いたがるのでしょうが、トラブル中のペリコにとってはやはり、思いやりは二の次だったようです。