マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

心臓がドキドキする話 その1

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「ねぇ、いつ死ぬの?」

「何よぉ、いきなり。相変わらずひどいわねー。死ぬってなんなの?」

 

ペラペラとよくしゃべる独身のペリコ伯母さんが、まゆさん宅に遊びに来ていました。

「だって、何年も前から自分の身体の違和感について言ってくるじゃん」

「あたしの心臓の話?」

「そう。あの会うたび会うたび、しつこく言うやつ」

 

「しつこくなんて言ってるかしら?心臓が変だって、ちょっと言っただけじゃない。せっかくおいしいチョコレート持ってきてあげたのに」

「それはどうも」

「これねぇー。デパ地下で2500円もしたんだから」

心臓に違和感を感じているらしいペリコ伯母さんは、恩着せがましい所があります。

 

「そうそう、その日はお洋服を買いに行ったんだけど、店員さんによく似合うって褒められてねぇ」

ペリコ伯母さんは自慢王でもあります。

 

「また自慢?」

「何よ。自慢じゃないわよ。ほんとのことだもの」

 

「あのねぇ。ほんとのことじゃなかったら、ただの嘘つきっていうんだよ。ことあるごとに自慢話挟み込んできて、友だちに鬱陶しいって言われない?」

「言われないわよ、そんなこと」

「…ふうん」

 

「ところでまゆちゃん、たまにはどこか遊びにいきましょうよ」

「心臓が悪いのに?」

 

「大丈夫な時もあるもの。どこ行く?」

「ペリコが行きたいんなら、自分で決めなよ」

 

「だめよ。私おばさんだから、どこがいいとかあんまり分からないもの。こういうのって若い人の方が分かるでしょ?」

「じゃあ”昔話の国”は?かぐや姫と一寸法師に会いたい。パレード見たい」

「遊園地?いやよ。疲れるもの」

 

「疲れる?なら草津温泉は?」

「いやよ。遠いいもの」

ペリコ伯母さんは自慢王だけではなく、文句王でもあります。

あとは海賊王の名を取りに行くだけです。

 

「でね、心臓のことなんだけどね」

「その話まだ終わってなかったの?」

 

「なによ、もう。誰も心配してくれないんだから。あんたのお母さん(隣家に住む妹)なんてひどいのよ。相談したら”あっそ”だって。こっちを見向きもしないで言うんだもの。冷たいったらないわ」

まゆさんの対応も周囲の皆さんと、あまり変わらないと思うのですが…

 

「あたしね、テレビで見たことあるのよ。身体に違和感があるのに、放っておいた結果、大変な病だったって話」

「でもペリコは病院で診て貰ったんでしょ?」

 

「そうよ。なんともないって言われたわ」

「ああ」

「”ああ”じゃないのよ。気のない返事ね。なんかね、あたしの心臓がね、こうドキドキしちゃって」

 

「それは自分で気にしちゃってるからでしょ?」

「ちがうの!ちがうのよ、もう!バックバクするの!心臓が!!」

「絶対おかしいわよ。いつもこのまま死んじゃうんじゃないかって思うんだから!」

「一人暮らしで家の中は静かだから、自分の出す音もよく聞こえるんだよ。ペリコはさぁ、心臓の音より、自分のくしゃみの音を気にした方がいいと思うよ」

 

まゆさんが実家で暮らしていた時、お隣のペリコ伯母さん宅から、大音量のくしゃみがよく聞こえていたのです

 

「医療従事者なんだったら、もう少し親身になって話を聞くもんじゃないの?」

「聞いた聞いた、って言うか会うたび聞いてる。ほんとに何でもないと思うよ。先生の言う通り!」

 

「気のせいだって言いたいの?全く!あたしのこと誰も分かってくれないんだから!」

「人ってさ、そういうものだよ。自分のことも分からないんだから、人のことなんて尚更わからないよ」

 

「そういうことを言って欲しいんじゃないのよ」
ようするに心配して欲しいのです。

続きます