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彼が誕生してから幾年が過ぎたのでしょう。
樹齢数千年。
樹木というのは動物たちよりも長生きであることが多く、樹齢千年越えの長寿の木は珍しくありません。
私たちが生まれる前からそこに存在し、私たちが死してこの世から消え去った後もそこに存在している。
周囲を這うありんこたちを見つめ、枝でくつろぐ鳥たちを見つめ、頭上を行き交う白い雲を見つめ、平和な時もそうでない時も、ただただ見つめてきた日々。
人間からしたら気が遠くなるほどの長い歳月、彼らは何を思って過ごしているのでしょう。
そんな植物たちも他の生物同様、時には体調が悪くなることもある。
上手に身動きが出来ない、ただそこにいるしか出来ない植物たちはきっと他の生物たちより、体調の悪さは死活問題なのではないでしょうか。
横になることも、雨風をよけるために場所を移動することも出来ず、つらくてもずっと同じ姿勢のままでいなければいけないのですから。
本日も無事営業終了
マメチュー先生とクラゲさんは、営業後のお片付け。
薬局内で観葉植物のように佇む木じじいは、ひっそりとため息をついていました。
マメチュー先生に何やら伝えにきたムシさん。
どうやら、木じじいの体調がすぐれないようです。
マメチュー先生が確認すると、確かに具合が悪そう。
「ふぅ」
「木じじい?」
「ほふぅ」
よく見ると枝にはいつものように、まゆさんが置きっぱなしにしている帽子がかかっています。
木じじいは普段、まゆさんにハンガーラックの代わりにされているのです。
「体調悪かったのですね。仕事中だったとはいえ気付かなくて申し訳なかったです」
「ふぅー」
マメチュー先生は、木じじい用の薬の取り置きがないので、明日早朝、薬草を取りに行くことにしました。
「今は暖かくして下さい」
そういってマメチュー先生は、市販の肥料を土に添えておきました。
マメチュー先生、超長寿である木じじいのカラダが心配なのです。
朝5時
朝食前に出発です。
すでに長く長く生きている木じじいですが、まだまだこの薬局で元気に皆を見守って欲しい。
おそらくポ村という名の村が存在する前から、この辺りで暮らしていたと思われます。
木じじいには植物セラピーの効果もあるのか、患者さんたちにも人気で癒しのマスコットのような存在でもあるのです。
もちろんマメチュー先生にとっても大切な存在。
祖父母の代からともに暮らしていたそうで、マメチュー先生も物心ついた時からずっと一緒なのです。
続きます