秋の土曜日の午後。
マメチュー先生たちはみんなで休憩中。
そこにりーちゃんが、マルズさんのかぼちゃのタルトを届けに来てくれました。
「おいしそう」
自然なかぼちゃの甘さを生かしたタルトです。
少ない量でも十分満足感を得られます。
「かぼちゃスイーツ大好きなんです。ボク」
「私もです。
スイーツ以外のかぼちゃ料理もお好きですか?」
「はい。天ぷらとか、コロッケとか」
「おいしいですよね!…あ、ぽのこ」
「ぽのこ?」
ぽのことはポ村に生えるおいしいきのこです。
どうやらこの休憩所のあたりは水たまりが多く、ジメジメしているので、ぽのこの群生地になっているみたいです。
マメチュー先生は、ぽのこを採取しながら考え事をしています。
「うん、今日のお夕飯は、ぽのこを使ったお料理にしましょう。
パゴロウさん、おやつのかぼちゃと被っちゃうメニューでもいいですか?」
「かぼちゃ料理ですか?
秋はかぼちゃを満喫したいです!」
マメチュー先生は、先日ケイヒさんにかぼちゃを頂いていました。
(ハロウィンの時、にゃこさんに無視されたかぼちゃです)
「ぽのこ入りかぼちゃシチューなんてどうですか?」
「ボクぽのこ、はじめて食べます」
「おいしいですよ、なかなか。
ホイル焼とか、炊き込みご飯にしてもおいしいです」
「じゃ、もうちょっとぽのことりましょうか!」
「そうですね」
ポ村には他の地域には、存在しない草木が生えています。
パゴロウさんはぽのこを採取しながら、思わず木じじいを眺めてしまいました。
改めて木じじいは“ポ村でしか会えない方”という印象を持ちます。
ポ村には未発見の生物とかも、いるかもしれません。
ついぽのこを持ったまま、木じじいを触ってしまったらなんと、木じじいからぽのこが生えてきてしまいました…
きのこは、倒木などからよく生えると言うけれど…
「ああっ…ごめんなさいっ」
虫さんと一緒に急いでぽのこを取り除きます。
未発見…
アマゾンの熱帯雨林などにはまだ、発見されていない薬の材料となる植物が、多く存在すると言われています。
そのため製薬会社などが、多くの資金を投じ現地調査をしているという…
ポ村にもたまに製薬会社の人が、調査しに来ています。
村長にベッタリと見張られていますが…
村長にとって薬になりそうなものが見つかるのはありがたい事ですが、それによって村を荒らされてしまうのも困るのです
食べられる野草?
薬になる草?
あるかなぁ?
ボクにも見つけられるかなぁ…
葉っぱを手に取り匂いを嗅ぎながら、それっぽいものがないか探してしまいます。
「家康みたい…」
外科手術のない時代。
病を治すのはおもにお薬でした。
徳川家康は当時、見たことのない草木を見ると薬効成分はないかと侍医に調べさせていたという。
家康は熱心にセルフメディケーションに、取り組んでいたそうです。
健康で長生きをしたかったのでしょう。
“健康で”というところが、セルフメディケーションの大事なポイントです。
家康は様々な生薬が配合された秘伝の漢方薬“無比山薬円”を服用していたと言います。
そのお薬は胃腸不良・血圧降下など、様々な作用があるそうです。
「徳川家康ですか?自分で薬草園も作ってしまったらしいですね。
自ら薬の調合もしたとか…
何だか薬剤師みたいですよね」
そして家康はマメクスリカフェと同じく、薬局製剤みたいなことも行っていました。
薬局製剤とは、薬局で調合したお薬のことです。
薬剤師は診察、診断は出来ませんが、問診を行い症状を聞いたあと、それにあった薬を調合して販売をすることが出来ます。
ドラッグストアで販売されている市販薬のように、
処方箋がなくても薬局で処方出来るのです。
但し販売出来る品目は決められており“薬局製剤指針”に書いてある作り方で作ったものでなければなりません。
それでも製剤出来る品目は、400品目以上はあります。
「やっぱりすごいなぁ」
「え?」
薬の作り方は決まっているので、成分はマメチュー先生が作っても一緒ではあります。
しかしマメクスリカフェで調合したお薬は、マメチュー先生が作ったっていうことが、ブランドになっている…そう先輩たちから聞いた事があります。
マメチュー先生は、いくつかの漢方薬も風邪薬も…鎮痛剤だって作れるのです。
そこへなぜだかまゆさんが怒鳴りながら、虫の大軍から逃げてきました。
「じじいー!おめえの仕業だろっ!」
まゆさんと木じじいは犬猿の中みたいです。
次回へ続きます