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前回のお話
休日の夕方、ポ村には霧が立ち込めていました。
非日常の状況に、ちょっとそわそわしているまゆさんとUSAさんは、宅飲みの買い出し中。
しかしUSAさんは先程から、何かの気配を感じるという。
USAさんは声を潜めます。
「ねぇ。今度は絶対!何かいる。嫌な気配を感じる」
「怖い事いわないでよ。あれじゃない?飛蚊症とかじゃないの?」
「ええええ?飛蚊症!ってなんだっけ?」
「なんか、目の端に蚊みたいなものが飛んでいるような気がしない?」
「え?蚊?蚊っていうよりは、このマスコットみたいなものが…」
「何?マスコット?」
「あのさ。さっきポ村に来たばかりの時”霧が出ている時は注意して歩きなさい”って言われた話してたじゃん?」
「うん」
「注意するのもそうなんだけど、そもそもポ村の掟でさ、霧が出ている時は、外を出歩いちゃいけないんじゃなかったっけ」
「ぎゃあ!」
「うわ、もう、何!?」
「いや、なんかこの辺ぬかるんでたから」
「ああ、なんだ。ポ村は小川とか水たまりのような沼とか、水辺が多いからね」
陽が落ち始めた頃、霧が辺りに立ち込める。
夕暮れと霧を利用し、魔物が近づいてきている。
でもその存在には気づけない。
魔物は上手く霧にまぎれながら徐々に対象者に近づき、もう逃げることが出来ない距離にいる。
ターゲットにされた者は、すでに魔物が目の前に現れてからしか、気付くことが出来ないのだ。
「絶対いる!なんかいる!飛蚊症?あたし飛蚊症なの?」
「やばいっ!掟を破った時に現れるやつって言ったら!」
「えっなに?まゆちゃん」
「ぎゃあああぁ」
「まゆさん、USAさん、足元よく見て下さい。霧の日は危険ですよ」
は…?
【ポ村の掟】
霧の日は外に出てはいけない。
※ポ村に点在する沼に気付かず、落ちてしまう危険性があるから。
「あたし、飛蚊症じゃなかったのね?」
飛蚊症とは?
飛蚊症とは、一般的に明るいところや白い壁などを見たときに、眼の前に虫や糸くずなどが飛んでいるようにみえる現象です。
硝子体(しょうしたい)に濁りがあると、濁りの影が網膜に映り、虫が飛んでいるように見えます。
加齢や生理的なものが原因なので、問題のない場合がほとんどです。
治療の必要はありません。
ただ、網膜剥離や硝子体出血が原因で起こる場合もあるため、浮遊物の数が増えたり、視力が低下したり、視野が欠けるようなことがあれば、すぐに眼科を受診してくださいね。
村人を守らなくてはいけない村長は、掟に厳しい。
霧の中、外を歩いている村人に対しては、いつも注意を促しています。
「村長、背後じゃなくて前にいたじゃん。油断したよ」
「おかしいなぁ、背後に何かいるように思えたんだけど」
「じゃあやっぱり、飛蚊症だったんじゃないの?」
「えぇー、そうなのかなぁ」
果たしてUSAさんは本当に飛蚊症だったのでしょうか。
それとも霧に紛れた何かだったのでしょうか…
「いいや、お酒飲んで忘れよー」
「覚えてて病院行ったほうがいいんじゃない?」
「やだ!だって、飛蚊症でも、飛蚊症じゃ無くてもこわいもの」
「ああ、なるほど