⚫︎本物語を最初からご覧になりたい方はこちら
⚫︎物語の概要をご覧になりたい方はこちら
秋冬は薬局の繁忙期なのですが、本日マメチュー先生は夕方までおでかけ。
管理薬剤師のマメチュー先生ですが、村長とともに都会の薬局を視察に行っているのです。
しかも今日は休み明けの月曜日なので、さらに忙しい。
クラゲさんは丘の下から、高齢で歩くのが困難な患者さん用タクシーを繰り返し行っています。
ということでパゴロウさん以外は、非常勤のパートスタッフばかり。
朝からてんやわんやのてんてこまいです。
ただでさえ繁忙期なのに加え、優しいてんまさん・お話上手なUSAさん等、女性スタッフは患者さんに人気。
そのため彼女たちが出勤の日は、いくらか患者さんの人数が増える傾向にあります。
とはいえ忙しくても、イライラを患者さんに見せてはいけません。
話の長い患者さん相手に、時計を見て忙しいアピールなどをしてはいけないのです。
一方パゴロウさんと、かぶろうとした猫に逃げられてしまったまゆさんは、調剤薬局の方を担当しています。
珍しくまゆさんはきびきびお仕事中。
患者さんの長めのお話にも、しっかりと対応しています。
お話好きな高齢者の、あちこちに話が飛んで整理されていない話を、うまく要約。
「私ね、最近お薬が飲みづらいの。なんだかご飯を食べるスピードも、遅くなってきたみたい。上手く食べれなくなっちゃって。いやだわ。やっぱり年だからかしらね。そういえこの間、ミルフィーユっていうデザートを食べたんだけどね。知ってる?ミルフィーユ。あれもうまく食べれなかったわ。すぐ倒れて汚らしくなっちゃうし、お洋服にもボロボロとこぼれちゃうし。あれよね、あのパイ生地っていうのが…あら、私なんの話してたんだっけ?」
「分かります。私も上手に食べられたことありません。末井さん、確かお薬が飲みづらいというお話でしたね。飲みづらいと言うのであれば、担当の先生に薬を錠剤から粉末に変更して頂けるよう相談しようと思うのですが、いかがいたしますか?」
「あら、そんなことができるの?じゃあ、お願いしようかしら」
USAさんの元には糖尿病の患者さんが来ていました。
USAさんは調剤事務ですが、市販薬売り場のレジも担当しています。
「今日はね、マメチュー先生特製のハーブティーを買いに来たんだ」
「そうなんですね。マメチュー先生のハーブティーって評判良いんですよ」
「最初ハーブティーって苦手だったんだけど、これは飲みやすいね。身体にもいい気がする」
「私はマメチュー先生のミルクティーの方が好きですけどね」
「ああー、美味しいよね。僕はさ、先生にまた血糖値が上がったと注意されちゃって」
「じゃあ、健康を気にするようになったんですね」
「はははは、まぁね。じゃ、今日はこれで…」
帰ろうとする患者さんに、USAさんはボソッとつぶやきました。
続きます。