マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

背後にいるのは誰? その1

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村を愛し、村を守る

ポ村の村長、お掃除中。

その時、村中を霧が覆う。

「もう、夕方でしたね。早く片付けて帰らねば」

 

夕方になるとポ村では霧が出ることが多いです。

 

夕暮れ時。

それは昼から夜に変わりゆくとき。

そんなときには”魔物が現れる”などと言われています。

もちろん、このポ村でもそう。

人影の正体…

それが人間なのか、それとも魔物が化けたものなのか、分からなくなってしまうのです。

それに加え、辺りは霧に包まれているのですから…

 

 

「背後に何かが見える気がする」

突然、変なことをつぶやくUSAさん。

「まだお酒は飲んでないわよぉ。これから一緒に飲むんでしょ。まゆちゃんちで宅飲み」

 

「っつーかせっかくの休日なのに、霧が出てきてない?さっきから」

「やっぱり?話に夢中になって、なんとなくそうかなぁくらいに思ってたけど、出ちゃってるよね?霧」

 

「背後に見える何かって、霧のせいでそんな風に見えたんじゃないの?」

「ああ、霧かぁ。ポ村に来た時、霧が出ている時は注意して歩きなさいって言われたわよね」

 

「言われた、言われた。ポ村ってなんか他の地域とは違ったことが起こるから、ちょっと気味悪かった」

「あたしも!でも今はちょっとワクワクしちゃうんだよね」

 

「台風の上陸直前みたいな感じ?」

「そうそう。徐々に風が強くなって来てさ、次第に雨も降り始めて…カーテンの隙間から外を覗いてみると、人影はほとんどない。車すら走っていない。そんな様子を見るとさ、怖いっていうドキドキもあるけれど、日常と違った状況にワクワクも感じちゃうんだよね」

 

「まぁ、そうだよね。あまり雪が降らない地域では、ちょっと雪が降っただけでテンション上がるしね。非日常にちょっとソワソワするんだろうね」

 

「ん-、でもね。やっぱり何かいるような気がするんだよね」

「え?なんなの?どの辺に何がいるって?」

「それはよく分かんないんだけど」

 

「USAってさ、霊感あるんだっけ?」

「ううん。霊感がある自覚はないけどぉ、気配って感じるじゃない?」

 

「じゃあやっぱ霧のせいだよ。ちっちゃい音とか空気の動きとかが原因で、気配を感じるっていうよね。あと準静電界とかを感じ取ってるとか」

「え?なに?準静電界っていった?何それ」

 

「詳しくは知らないけど、ざっくり言うとすべての動物が発している電気のこと」

「電気か。だから家電から気配を感じるわけね」

「冷蔵庫の気配ね。お酒入ってるかな?」
「ビール冷やしてて欲しいわ」

「くだらない話は置いといて、とりあえず何飲む?おつまみだけじゃ無くて、飲み用の買い物しなきゃ」
「熱燗かなぁ。あたし熱燗好きなのよ」
「あたしはそんなん飲めない。甘いやつにする」
「子ども舌ね。じゃあ梅酒?」

「そういえば、こないだポ村の梅酒の味を褒めたら村長にもらっちゃった」
「あら、いいわねぇ。あたしも飲みたい。あたしは、村長にこんなのもらったわ」


「うわ。村長そっくり。モナリザの絵みたいに、どこから見てもずっと目が合う気がするな、これ」

「あ!」

「なに?急に大きな声」

続きます