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村を愛し、村を守る
ポ村の村長、お掃除中。
その時、村中を霧が覆う。
「もう、夕方でしたね。早く片付けて帰らねば」
夕方になるとポ村では霧が出ることが多いです。
夕暮れ時。
それは昼から夜に変わりゆくとき。
そんなときには”魔物が現れる”などと言われています。
もちろん、このポ村でもそう。
人影の正体…
それが人間なのか、それとも魔物が化けたものなのか、分からなくなってしまうのです。
それに加え、辺りは霧に包まれているのですから…
「背後に何かが見える気がする」
突然、変なことをつぶやくUSAさん。
「まだお酒は飲んでないわよぉ。これから一緒に飲むんでしょ。まゆちゃんちで宅飲み」
「っつーかせっかくの休日なのに、霧が出てきてない?さっきから」
「やっぱり?話に夢中になって、なんとなくそうかなぁくらいに思ってたけど、出ちゃってるよね?霧」
「背後に見える何かって、霧のせいでそんな風に見えたんじゃないの?」
「ああ、霧かぁ。ポ村に来た時、霧が出ている時は注意して歩きなさいって言われたわよね」
「言われた、言われた。ポ村ってなんか他の地域とは違ったことが起こるから、ちょっと気味悪かった」
「あたしも!でも今はちょっとワクワクしちゃうんだよね」
「台風の上陸直前みたいな感じ?」
「そうそう。徐々に風が強くなって来てさ、次第に雨も降り始めて…カーテンの隙間から外を覗いてみると、人影はほとんどない。車すら走っていない。そんな様子を見るとさ、怖いっていうドキドキもあるけれど、日常と違った状況にワクワクも感じちゃうんだよね」
「まぁ、そうだよね。あまり雪が降らない地域では、ちょっと雪が降っただけでテンション上がるしね。非日常にちょっとソワソワするんだろうね」
「ん-、でもね。やっぱり何かいるような気がするんだよね」
「え?なんなの?どの辺に何がいるって?」
「それはよく分かんないんだけど」
「USAってさ、霊感あるんだっけ?」
「ううん。霊感がある自覚はないけどぉ、気配って感じるじゃない?」
「じゃあやっぱ霧のせいだよ。ちっちゃい音とか空気の動きとかが原因で、気配を感じるっていうよね。あと準静電界とかを感じ取ってるとか」
「え?なに?準静電界っていった?何それ」
「詳しくは知らないけど、ざっくり言うとすべての動物が発している電気のこと」
「電気か。だから家電から気配を感じるわけね」
「冷蔵庫の気配ね。お酒入ってるかな?」
「ビール冷やしてて欲しいわ」
「くだらない話は置いといて、とりあえず何飲む?おつまみだけじゃ無くて、飲み用の買い物しなきゃ」
「熱燗かなぁ。あたし熱燗好きなのよ」
「あたしはそんなん飲めない。甘いやつにする」
「子ども舌ね。じゃあ梅酒?」
「そういえば、こないだポ村の梅酒の味を褒めたら村長にもらっちゃった」
「あら、いいわねぇ。あたしも飲みたい。あたしは、村長にこんなのもらったわ」
「うわ。村長そっくり。モナリザの絵みたいに、どこから見てもずっと目が合う気がするな、これ」
「あ!」
「なに?急に大きな声」
続きます