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「あらクラゲさん、こんにちは。今日もお願いしますね」
穏やかでいつもにこにこしている、患者のきのこさん。
駄菓子屋さんの店主で、よく薬局に顔を出してくれています。
「きのこさん、こんにちは」
「まぁ、マメチュー先生」
「温かい梅湯はどうですか?」
「うふ、ありがとう。美味しそうだわ。いただきます」
梅湯とは、村の特産品である梅干しと梅干し・赤紫蘇が浸かっていた汁、それにすりおろし生姜をお湯を入れたドリンクです。
身体が温まり、この時期は風邪予防にもなります。
「ポ村に住んでいると長生きできそうね。あたしはこちらにお嫁にきてからだけど、マメチュー先生はポ村出身だったかしら?」
「ええ、祖父母の代からポ村です。そういえば、皆長生きでしたよ」
「そうなのね。あたしも頑張らなくちゃ」
USAさんはきのこさんを、微笑ましく見つめていました。
”梅干しみたいなお手々。かわいいなぁ”
「もうすぐね、誕生日なの。うちの娘」
「それは楽しみですね」
「忘れないよう、つい何回も確認しちゃうのよ」
「プレゼントは何か買われたんですか?」
「我が家だけ慣習なんだけどね。赤ちゃんが生まれると赤べこを送るのね」
「あかべこ?あの赤いべこのことですか?」
「そう、べこちゃん」
「えーいいなぁ。赤ちゃんに赤べこちゃん。可愛い。記念になりますね。一緒に成長していく感じだわ」
「娘がね、ちょうど50歳になるから、2代目の赤べこを送ろうかと思って」
「新しい赤べこちゃんですか。それもいいですね。喜ぶと思いますよ」
”幼い頃は人生の中心に家族がいたけど、今は友だちや職場の同僚が中心にいる。年を重ねて行くとまた、家族が中心になっていくのかな”
「そうだわ。USAさん、カットバンある?最近あかぎれが多買っていこうかなって」
「カットバン?何ですか、それ」
実は絆創膏は地域で呼び方が異なります。
関東はバンドエイド。
北海道はサビオ。
九州リバテープ等。
「へぇ、今知りましたそれ。そっか。さっき赤べこって言ってたからきのこさんは、福島県出身なのね。個人情報隠したくても、気付かないうちに出身地バレちゃいそう。SNSとかで気を付けなくちゃ。身バレしちゃう」
「USAさんは関東出身でしたよね?じゃあバンドエイドって言わず絆創膏と言わないとですね」
「あ!やだ、もう言ってるかも!ちょっと確認してみてもいいですか?」
「それはお仕事が終わってからにしましょうね」