前回のお話
朝…。
ポ村に住むカラスケくんや、スネ文さんはおしゃべりな女性の方に絡まれていました。
午前9時前、マメチュー先生の薬局では開店準備中。
高齢の患者さんたちは、開店時間の9時前から薬局内に入ってきてしまうのですが、今日は誰も入ってくる様子はなく、代わりに外から楽しそうな話声が聞こえてきました。
気になってマメチュー先生が様子を見てみると、ペモリンさんがご高齢の患者さんとお話をしていました。
「まぁマメチュー先生、おはようございます」
「ペモリンさん、おはようございます」
彼女は、製薬会社で働く営業さん。
いわゆるMR(医薬情報担当者)さんです。
営業とはいえ、直接薬を販売するわけではなく、製品の情報を提供してくれたりするのがお仕事。
「朝からけっこう患者さん多いですわね。」
「田舎町ですけどね。村じゅうから、来てくださっています」
「村の外からいらしている方もいらっしゃるでしょう」
「ええ。ありがたいことです。先ほどは患者さんたちの対応をして下さって」
「いいえぇ。会社からは、直接患者さんとやりとりするなって言われているんですけどね。もうね、何度言われてもついー。そうだ、今日きのこさんいらっしゃる?毎回あの方に、ここでお会いするんですよ。元気でいるかなって思って」
「きのこさんですか?元気ですよ」
そこに患者さんも一緒になって会話に参加をする。
「もうすぐ来るはずじゃよ。薬貰いに行くって言っておった」
「じゃあ今日もお会いできるかしら?」
患者さんではないMRさんという人が、ぐいぐいマメチュー先生に話しかけているので、物陰から様子を伺っているのは新人薬剤師のパゴロウさんです。
「営業の方だけあって、コミュニケーション能力の化け物ってかんじ。ああいう人って身近にいないから、ちょっと不思議。迷惑そうにされても、めげずに話しかけれそうな人…きっと精神力が強いんだろうな。羨ましいな」
ペモリンさんは、マメチュー先生との挨拶もそこそこに、また患者さんとおしゃべりしていました。
「医薬品の情報提供に来たんじゃないのかな、あの人」
とりあえず、自分の仕事に集中することにしたパゴロウさん。
しばらくしてー。
「パゴロウさん」
「はい、マメチュー先生」
「朝一でお薬を取りに来ると言っていたきのこさんですが」
「そういえば、まだ来ていませんね」
「何かあったんじゃないかと」
「そうですよね」
きのこさんはとてもまじめな方で、基本的には時間をきっちり守るタイプです。
「そういえばMRの方は?」
「きのこさんを待っていたんですが、くまじろ先生の所に行くって言ってましたよ」
「ああ」
くまじろ先生はポ村で内科医を営むパゴロウさんの叔父。
”知られていたら、色々話しかけられてたかもなぁ”
「パゴロウさん?」
「あ、はいごめんなさい。このままお昼まで様子をみて、いらっしゃらないようなら連絡してみましょうか?」
「そうですね。そうしましょう」
「マメチュー先生、やっぱりきのこさん、いらっしゃらなかったですね」
「ご自宅に電話してみます」
プルルルルル
プルルルルル
続きます