
「あーこわい。気持ちわかるなぁ。そうだよね。怖いよ。かわいそうに」
ふと、テレビを見ていた少年の目は、黒っぽい小さな塊が床に落ちているのをとらえた。
「ひやぁぁぁっ!」
……。
「いや、アレに似たサイズの、ただのホコリだったけどね。なんでか何度も見間違うんだよね」
どうやら僕は人より、ビビりみたいだ。
男女平等だとテレビの中の人たちは言っているけど、やっぱり男子が怖がりだと「男の子のくせに」と言われてしまう。
「ねぇ…」
「え?」
「今一瞬びっくりしたよね?あたしが怖くて?それとも急に声を掛けたから?」
「ははは。いやいや。おはようさんです。あれ?ガラゴちゃん、指ケガしているね」
両方の可能性を感じているとは、とても言えない。
それでもガラゴちゃんは今日も可愛く、お目々もくりくりだった。
「指?ペットにかまれちゃったの。動物もビビりが多くない?驚くと、すぐパニクって暴れるんだもん」
「ああ。体が大きな象でも、驚いてパニック起こしている映像みたことあるかも」
「昨日テレビ見てたらさ、高所体験が出来るVRつけて、大騒ぎしていた人がいて…あれ面白くてめちゃくちゃウケちゃった。大人でもビビりの人ってすぐパニクるよね」
「面白かったんだ…」
「そうだ、この絆創膏可愛くない?薬局の人にもらったの」
ガラゴちゃんがいう絆創膏は、女の子が好きそうなかわいいイラスト付きのピンク色のものだった。
「薬局?マメチュー先生に?」
「違うよ。ええと。てんまさん。たまに薬局にいるでしょ?髪が長い女の人」
「マメチュー先生以外の人?あんまり覚えてないなぁ」
「なんでよ!調剤事務のUSAさんとかいるじゃん!まぁ、いいや。一つばんそこあげる。ヨモギくん、似合うよ」
「えぇ!?」
ピンクが似合うって…
「思ったんだけどさ。あの薬局のマメチュー先生とか、ちょっとやそっとのことでは驚かなさそう」
「確かに、マメチュー先生がパニクっているのは想像できないかも。いつも落ち着いているものね」
”てんまさん、USAさん?いたかなぁ。ガラゴちゃんもそうだけど、ほんとは女子もちょっと苦手”
「そろそろあたし、1年生たちのところに行かなきゃ。じゃね!」
ポ村小では、学年が上がるごとに下級生のお世話をする。
そして僕たち6年生は、新入生のお世話をすることになっている。
続きます