前回のお話
医師に無駄に薬の在庫を用意するように言われ、ご立腹だったイチイさん。
今は外出中ですが、もう少しで戻ってくるようです。
「イチイさん、イライラしてたなぁ。うちの調剤薬局グループの息子だしね。今はまだエリマネだから、経営には直接関わってないかもしれないけど」
「たまにいますよね。癒着じゃないかなって思わせる医師からの注文。確認のしようがないから決めつけるわけにもいきませんけど」
「でも今回は癒着だろうなぁ。新薬が出来たタイミングでさ。処方するよう言ってきたくせにさ。結局いつまでたっても使わねぇんだもん、新薬。だけどさー、勉強会とかで出る弁当レベルでも製薬会社のってめっちゃ豪華じゃん?医師も色々世話になっているだろうしさー。製薬会社に頼まれたら断れないっての分かるよなぁ」
「夕方過ぎ頃、また顔を出すって言ってたからイチイさん、そろそろ来るかもですね。怒りが治まっていてくれればいいですけど」
オウギさんとチョウジさんは仕事中にこそこそ話し合っています。
「イチイさんを、イライラさせないようにしないとですね」
その会話に、ロクジョウさんも小さな声で参加。
「そうだな。俺たちのためにもな」
オウギさんが患者さんに服薬指導をしていると…
「はい、できますよ。ただし処方医に確認を取ってからになるので、お待ちいただけますか?」
「ありがとうございます。お願いします」
【錠剤を粉にする理由】
錠剤が飲みにくい脳梗塞や嚥下障害のある患者さんのため。
医師から処方箋に粉砕と指示が記載されています。
薬剤によっては”腸で溶ける”などの加工がされているので、粉にしたい場合は医師、薬剤師に相談してみて下さい。
薬局で錠剤を粉末にする場合は”自家製剤加算”というものがプラスされ、調剤料が少しだけ高くなります。
「チョウジくん。担当医からOKでたから、この錠剤、粉にしてくんない?俺、監査(調剤したものが間違っていないかチェックする)やるから」
「じゃあ、オウギさん。ついでにこれお任せします」
「ん?」
オウギさんは、チョウジさんから処方箋を渡される。
「なんだよ。気難しいで有名な川原先生の処方箋?」
そこには処方医による”粉砕”との指示がありました。
「あれ?これ」
「そうなんです。だからお願いします」
粉砕と指示されていた薬剤は特性上、粉砕してはいけない薬でした。
続きます