です。

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

町の洋食屋さん その2

前回のお話

自分の家族と過ごすのが苦手だった、子供のころのてんまさん。


子供の頃は近所にある、居心地の良い老舗洋食店に入り浸っていたようです。




「うちの新メニューが、ポーククリームシチューですって?」




「良いんだよ、母ちゃん。

何でも試してみるのって面白いじゃん。

思い込みで決めつけて生きるのは、つまんねぇし」



「まぁ…確かにね、
作るだけ作ってみるのはいいかもね」



競争の激しい飲食業界。



店主のケシことグラタンも、他の店に取り込まれないよう、日々努力している。



客のニーズを把握し、研究。




新メニューの開発中でも、毎日の仕込・営業はもちろんあるので一日中働くことになる。


でもグラタンは根気と根性、そして向上心がある人だ。


「とりあえずこの店を安定させたくてね。

ってこんなことばっかり夢中でやってるから、結婚出来ないんだよな、俺。

今年こそ結婚したいんだけどさ!」



料理の失敗、恋の失敗、めげずに繰り返し挑戦するのがグラタン。



努力しても客が増えるという、確約はない。



むしろ客商売をしていたら、トラブルなど色々起こる。



「まぁ、多かれ少なかれ、どこの店だってあることさ」



「でもたまに、お店しめたくなっちゃうこともあるわよ?」



グラタンには簡単に、苦難に屈しない精神力があるようだ。



そんなある日ー。



「なぁ、てんま俺さ」



「元気ないね。どうしたの?

新メニューの開発難しい?」



「…多分開発中に味見ばっかり、してたからだろうな。

糖尿病になっちゃってさ」



「え…?」



「まったくー。食べ過ぎなのよね、この子ったら。

そんなのいつもの根性で治しなさい。
病は気よっ!!」

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「そうだよな。
まぁでもこれからは、健康のことも考えた食生活にしてみるよ。

クリームシチュー、もうちょっと待ってな」



「うん、無理しないで」



その後、グラタンは体調があまり良くない日が、続いていたようだった。



“ホントに、無理しないで欲しい”



そんなことを願うばかりだった。



「あのな…てんま…
俺、膵臓がんなんだって」


【膵臓がん】
症状が出にくいため、早期の発見が難しいガン。

そのため発見したときには、病態が進行してしまっている事がある。

進行してくると腹痛、食欲不振等の症状がでる。

膵臓がんを発症する原因として、糖尿病が関連しているとも言われている。

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「グラタン…」


その話を聞いた私は、まさに頭が真っ白の状態…


ショックのため、自分の心臓のドキドキがこだまするばかりで、言葉も出てこない状態だった。



「てんまぁ、そんなに心配すんな」



「………」



「俺の寿命は、赤色矮星と一緒だからさ」



「赤色矮星…
大きくない赤い恒星?」



宇宙が好きな、私に合わせた話。



「そう、赤色矮星。

要するに黄色矮星である太陽より、ずっとず~っと長生きなんだ」



恒星は小さくて、温度が低い星の方が長生きだ。

それは少しずつ、体力を消耗していくからなんだと思う。

一方いわゆる“ブルージャイアント”青色巨星はとても寿命が短い。


命を凄まじい勢いで、燃やし尽くしてしまうからだ。




「じゃあ47億年以上生きるの?」


「そう」



「ふふっ…大変だ」





お医者さんにに生活習慣を正すよう言われても“自分は大丈夫だ”と過信し、一向に正す気のない患者がいる。



身内などからも強く注意されると…



「いいよ、別に病気になって早く死ぬから」

こう切り返す人も多い…




病気になって、痛みも無く眠るように死ねるとでも思っているのだろうか。




「大丈夫、病気になんて負けねぇからさ。

今、死ぬわけにはいかないし。

店の状況をもっと安定させたいし、クリームシチューも完成させたいし、結婚もしたいし」



「欲張りグラタン…」



「なぁ。
死にたいって思う人って、何でなんだろう。

何で人だけが、自ら死を望むんだろう」




「はいはい、そこ邪魔。

全く仕事の邪魔なのよ。

ホントに…全く…」



グラタンの母、フサオさんは病気が発覚してから、以前にも増して忙しく働くようになっていた。

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(フサオさん…グラタン…)



私が強くならなくちゃ。


どっしりとして…


ふたりが安心して頼れるように、相談出来るように…

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「いてっ、いててて」



「グラタンっ」



「へへ…見ろよ、この薬の量」



「…すごい、たくさんあるね」



「だろ?
糖尿病プラス膵臓がんの薬。

薬で腹一杯にしたくないんだけどさ」



グラタンは必死に、痛みに耐えているようだった。



きっと、想像も出来ない痛みなんだろう…


続きます