⚫︎本物語を最初からご覧になりたい方はこちら
⚫︎物語の概要をご覧になりたい方はこちら
あたしの前ではいつも斜め後ろ向いちゃって、ロクに顔も見せてくれない女。
なんだかんだでそんな姉に会わなくなって今日で、ちょうど半年。
親ならまだしも兄弟というのは、親元を離れるとあまり会わなくなるものらしい。人によっては、ほとんど縁切り状態になっている人もいるという。
特にうちは母親が違うし、一緒に住んでいたのもそう長いわけじゃない。
それでも思い出はたくさんあるけれど。
母親違いで1歳下の妹って、そりゃ複雑だよね。
まぁ、あの子はその辺に関しては、なんとも思ってなさそうだけど、世間的には…そういうのはね。
だけどあたしはあの子…姉に会いたいのさ。
本当は連絡だって毎日したい。
このままだと会うことないまま、今度は1年を迎えてしまう。そのあとは、会わない生活が当たり前になっていきそうで、それが怖い。
「あ、トビー」
「ぬ?」
「何者だ!」
「忘れられてる!?あたしかわいそー。今のはしゃぎぶり返して。あたしたち会ったことあるじゃん」
「ぼくはおまえに会ったことない。おまえなんか知らない!」
「だって、きみトビーくんでしょ?」
「ぼくはトビーくんだけど…お前はだれだ?」
「ねーえー!少しくらい思い出そうとしてよ。そんなにあたしって印象薄いかな?」
「しらない人間を思い出すことはできないものっ!」
トビーくんは会話をしながらも、何かを探すようにキョロキョロしています。
「何か落としたの?探し物?」
「お誕生日に買ってもらった、大事なおもちゃが無くなったんだ」
「このあたりで無くしたの?」
「わかんない。気づいたらなかった。どこかで落としたのかなって」
「おもちゃねぇ…一緒に探す?」
「だめだ!どこの誰だか分からない人間とは、関わらないんだ。さてはおまえ!おもちゃを盗む気だな?」
「この子ときたら、ほんと失礼だなぁ。じゃあ、思い出すためにきみとあった時のこと話してあげる。最初に会ったのは2年前の5月20日。ママと一緒に薬局にいたよね?」
「2年前?」
「次に会ったのはね、その年の暑い夏の日。8月の15日だった。多分夏休みでその時はパパも一緒にいたよ」
「うそだ。そんなこと覚えているわけないじゃないか。子どもをばかにするな」
「うそじゃないって。あたしね、記憶力いいんだ。かっこいいパパときれいなママ。トビーはどっちかっていうとママ似だね。よく言われるでしょ?」
「う…。じゃあトビーから質問をする。トビーの誕生日はいつでしょう」
「知らないよ、そんなこと」
「やっぱり知り合いだなんてうそっこだ!」
「そんなこと言われたって、あたしトビーの誕生日、聞いたことないもの」
「知り合いなのに?ぬぅ、やっぱり怪しい」
「怪しいかなぁ?あたし怪しいなんて言われたこと、ないんだけど」
続きます