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前回のお話
パティスリーマルズにケーキを買いに来たUSAさん、そしてきのこさん。パティシエのマルズさんが、ひょんなことからお手伝いのりーちゃんの為にパンケーキを作ってあげることになったのですが、パンケーキに合わせるハチミツの瓶が硬くて開かなくなってしまったようです。
「瓶が開かない?そっか。蜂蜜とかジャムって一回開けると、開けづらくなるのよね」
ケーキを買いに来ただけのUSAさんですが、何となく申し訳ない気持ちがあったため、ハチミツの瓶を開けてあげることにしました。
というかこのメンバーの中では、USAさんが一番腕力がありそう。
「USAさん、おねがいします!」
「うん?確かに硬いわね」
「がんばって」
「うっ、うくくくっ」
「もうちょっと、もうちょっと」
「う~~…いや、これ無理!かったっ!ケンシロウ用なの?」
「ええー。そんなぁ」
「ごめん。手がヒリヒリしちゃって…」
思わずりーちゃんにハチミツの瓶を返そうとするUSAさんですが、期待に胸を膨らませた幼き瞳が、こちらを見つめていることに気付く。
”おうっ…やっばっ”
「ちょっと、ちょっと待っててね」
調剤事務員として、人々を助けるお仕事をしているUSAさん。
“いつもありがとう。貴方の笑顔に癒されるわ”
そんな一言がやる気につながる。
みんなに喜んでもらいたい。
みんなの助けになりたい。
”手があぁぁぁ~!”
「USAさん、ファイトっ!」
”マメチュー先生。血管切れたら死にますか?それが気になるくらい、頭に血が上ってるのが分かる。だから、こんな状況なのに死ぬのかどうか、すっごくスマホで調べたい。けど、キラキラお目々で見つめられているあたし。それでもケンシロウではない非力なあたし”
「USAさん、落ち着いて」
そっと助け船を出してくれたきのこさん。
「冷蔵庫で保存していたから、瓶の蓋が収縮してかたくなってしまったのね。ハチミツやジャムは、糖分粘度が高いから瓶の縁につくと、カチカチにかたまってしまうの。
普段から使うたびに、汚れないよう拭いてからしまうと、かたくなるのを防げるわよ。私はもうおばあさんで、開かなくなったら困るから、キチンと綺麗にしてるのよ。
とりあえず、蓋を温めてみましょう。それでも開かないなら、ゴム手袋をしてから開けてみると良いわよ」
「そうなんですね。ありがとうございます。やってみます」
マルズさんからフリーサイズのゴム手袋を借りて、瓶を開けてみるUSAさん。
「よぉし」
パコッ!
「おいし~」
とろりとしたハチミツがのった、ほうれん草ペーストが生地に練り込まれているホットケーキを、嬉しそうに食べるりーちゃん。
「ふわふわだー。やっぱりホットケーキのお供はハチミツですねぇ」
とりあえずUSAさん、血管切れて死ぬことはありませんでした。
無事、蓋を開けられて一安心。
りーちゃんに笑顔が戻って、さらに一安心。
そんなりーちゃんは美味しそうに、ホットケーキをほおばり続けています。
「りーちゃん、このずんだモンとホットケーキ。半分ずっこしない?」
「うーん」
りーちゃんはじっくりと自分のパンケーキと、USAさんのずんだモンを眺めてから答えます。
「ううん。しない」
色々とお預けを喰らっていたからか、ホットケーキは予想以上の美味しさだったようです。
残りのホットケーキを、りーちゃんは大事そうに口に入れ、満足気にほおばっている。
「ケチー。まぁいいけどさ」
りーちゃんの嬉しそうな顔を見て、同じように嬉しそうな顔をする大人たち。
りーちゃんもいつか、お客様の笑顔が自分の喜びにつながるようになるといいですね。