マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

インフルエンザの時の市販薬の服用  その2

前回のお話

夜中にインフルエンザで苦しんでいるという、5歳の子ども。


その母親から
「市販の風邪薬を飲ませてもいいですか」
と、まゆさんがマメチュー先生から預かっていた患者さん専用の携帯電話に、問い合わせがありました。




本来市販の風邪薬は、対症療法でしかありません。



症状は和らげますが、インフルエンザ自体に効力はない。


そして特に幼い子どもには市販薬ではなく、処方薬を服用することをオススメします。



インフルエンザ薬にはウイルスの増殖を抑える働きはありますが、ウイルスを殺すわけではありません。



そのためウイルスが増えすぎた状態で薬を服用しても、意味が無いのです。



なので薬は48時間以内に、早急に服用する必要があります。



体力の無い幼いお子さんには、早くインフルエンザ薬を服用させた方がいいのです。



明日すぐにでも薬局に行って、処方して貰った薬を服用するよう指導するまゆさん。



「そうなのね、分かったわ。
明日すぐにでも処方薬を取りに行きます。

でも今は…
うちの子が本当につらそうなの」



「その市販薬の商品名を、伺ってもよろしいですか?」



「ええと…」




その商品名の薬には、アスピリンが配合されていました。


「インフルエンザのお子さまには、与えない方がよろしいと思います」



「…与えない方がいい?
あっ坊や大丈夫?咳つらい?

あの…あなた薬剤師なんですよね?
今飲ませないでどうするんですか?

だってインフルエンザで亡くなる人って、少なくないんでしょう?

新型コロナと違って、子どもは重症化しやすいんでしょう?」



母親は答えを聞かなくても、薬を与えるつもりのようでした。



答えは決まっていても不安で誰かに話を聞いて貰いたくて、電話をしてきたのかもしれません。



「まっまゆさん」


一緒に隣で聞き耳を立てていた村長は、相変わらずオタオタしています。

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インフルエンザ時の解熱剤の服用は要注意です。


危険なのでご存知の方も多いかと思います。



小児以外でもインフルエンザの時に、自己判断で市販薬を使用してはいけません。



しかし相談する相手がいなかった場合。

市販薬を服用してはいけないということを忘れてしまいパニックを起こした結果、服用させてしまう可能性もあるかもしれない。



でも今回は事前に相談を受けています。



ならば服用させるのを止めなければいけない。



「フェネさん。
お話を聞いて頂いてもよろしいでしょうか?」



アスピリン製剤の他
ジクロフェナク製剤、メフェナム酸製剤、サリチル酸系の解熱剤は、インフルエンザ脳症の誘因です。



5歳以下の子どもに多く見られるインフルエンザ脳症。



風邪薬の中には急性脳症の一つであるライ症候群という、脳に障害が起きるような重大な合併症を起こすリスクのある薬もあります。



ライ症候群は痙攣・異常行動等の症状があらわれ、最悪死に至ることもあります。



若い母親が飲ませようとしていたのは、インフルエンザ脳症を誘因する可能性がある成分が含まれていました。


「いやだっ。
そういえばその話、聞いたことあったわ」


村長は息を飲んで様子を見守っていました。

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「ただしお医者さまから処方されるインフルエンザの解熱剤や、アセトアミノフェンが含まれているタイプの市販薬なら服用させても大丈夫ですよ」



「アセト…あっあっ!あった。

その成分が入っているお薬も!

良かった。この間色々買い足しておいて」




翌日


マメチュー先生の携帯に昨日の若い母親から、お礼の電話が入ったとのこと。


そして村長が電話に出たためか、役場の方にもお礼の電話が入ったそうです。


インフルエンザ薬もお子さんに飲ませるのが少し遅れましたが、大事には至らなかったそうです。



役場でその連絡を受けた村長は、その日一日ご機嫌でした。

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【インフルエンザ薬・補足説明】

今回お子さんは飲み薬を服用されたようですが、インフルエンザ薬には飲み薬・吸入薬・点滴の三種類があります。


効果は全て同じですが、患者さんの年齢・状態によって使い分けをしています。


*飲み薬*
吸入薬を上手く吸い込むことに不安があるお子さまや、高齢者向け。



*吸入薬*
しっかり吸い込める人向け。
喘息の方は発作が起こる可能性があるので、注意が必要。



*点滴*
意識がハッキリしていない人に使用




吸入薬や飲み薬は発症を予防するために、使用することがあります。
(保険適用外)


条件:インフルエンザ患者の同居家族(医師の診断が必要)


更に条件として

65歳以上の方
慢性呼吸器疾患患者
糖尿病患者
慢性心疾患患者
腎機能障害患者
等の方



新型コロナ等の感染症も同様ですが、解熱剤が効き、症状が楽になってもしばらくは外出を控えましょう。



薬が効いてしまう事の落とし穴でもありますが、感染者が動くことによって周囲にウイルスを拡散してしまいます。