前回のお話
“人を殺す薬”
それを作るためポ村で一人、薬の開発をするカシュウ。
上空に浮かぶ致死性の高い毒草“食虫エアプランツ”を手に入れるため、カラスに指示をしていた。
「頼まれていたのに、持ってこれなくてごめんなさいだす」
人の目に触れないようにするため、闇夜に溶け込むことが出来るカラスに目を付けたカシュウ。
“なっ、なんだすか?
え、夜?飛べるだすよ”
最初にカラスをとらえたときに、そう言っていた。
“ワタスたちの事を鳥目いうらしいのだすけど、ホントは夜でも見えているのだす”
フクロウや蛾など夜行性の鳥や昆虫がいる一方、雀や蝶など日中にしか見かけないものもいる。
しかし、カラスは夜も飛行が出来るらしい。
夜は周囲が見えていないカシュウのために、毒草を…
カラス自身は毒草だと認識していないが、カシュウの代わりに持ってくる約束をしていた。
アタマは悪そうだが、漆黒の翼を持つカラスなら闇夜に溶け込み、上手く作業を遂行出来るだろうとカシュウは考えたのだ。
「でもお昼に活動する方が好きなのだすけど」
カラス自身は容姿を利用し、闇夜に紛れて活動しようとは思って無いらしい。
「今からまた、挑戦してくるだす。
行って来るだす!」
カラスはカシュウの頼みに懸命にこたえようと、再び毒草を探しにいく。
このカラスは
“人助けをすることは良いことだ”
そう教えてもらっていた。
「ワタスたちが昼間が好きなのは、人間より色が多く見えるからだと思うと言われたのだす」
カラスはかつて、人に言われたことを思い出していた。
“すごいよね。羨ましいなぁ。
どんな世界が見えてるんだろう”
“そうだすか?羨ましいだすか?”
日中活動するカラスは、紫外線の領域が見えている。
それを利用し、色々な食べ物を見つけている。
実際鳥目と言われている、夜に目が見えていないのは、ニワトリなど鳥の中でも一部のみである。
一方で人間の方はカラスのその習性を利用し、紫外線を吸収するゴミ袋を作り出したりしている。
しばらくして再び戻って来たカラス。
「ごめんなさいだす。
また見つけられなかっただす」
闇夜に溶け込んで飛ぶことは出来ても、紫外線が無いため、やはり夜はあまり見えていないのだろう。
カシュウはすでに、カラスに期待などしていなかった。
「役に立てなくて、ごめんなさいだす」
だがカラスの方は、しょぼんとしている。
“カシュウを助けることが出来なかった”
人を殺すための薬を、作ろうとしているカシュウを…
でも、カラスは気付いていない。
カシュウを助けられなかったこと。
それが他の人々を助けることには、なっているかもしれないということを…