「カラスって早起きよね。みんな何時に起きているの?」
「早朝の渋谷とかでご飯食べてるわよね。4時起きとか?そうでしょ?あたしの直感、よくあたるの。ついでにあたしは6時起きよ」
「そうだすか。わたすの仲間には、0時過ぎには起きているカラスもいるだすよ」
「うそよー。午前0時?寝る時間じゃないのよ」
カラスは夢を見ることはほとんどなく、一度の眠りは深く短いそうです。
「そうなんだぁ。いいわね。昼寝はするの?しないの?」
「ええと…」
「ちょっと眠ればいいってことは、一日が長いってことでしょ。羨ましいわね。あたしも一時間ぐらいで疲れがリセットされる身体になりたいわ。そうなったら浮いた時間になにしましょう。仕事の前に英会話教室行こうかしら。海外旅行たくさんしたいのよね」
「あの、わたす、ちょっと用事が」
「え?なによぉ。ねぇ、ちょっと!」
ばさささっ
「カラスの用事ってなんなのよぉ。分かった!恋人に会いに行くのね。そうでしょ。あたしの直感あたるのよー」
一人で満足そうに笑っている最中の彼女の横を、小料理屋三すくみの従業員、スネ文さんが通過していきました。
天気のいい日、彼は身体をあたためるため、朝からお散歩をするのです。
「あら、おはようございます。お散歩ですの?」
「オッ!オオ…オハヨウゴザイマス」
スネ文さんは彼女を見て、若干動揺したようです。
「久しぶりになってしまいましたわね。私ももっと足しげくポ村に通いたいのですが、ちょっと都心からは離れていますでしょ?カラスみたいにちょっとの眠りで満足できれば、もっとあちこち行けるようになると思うんですけれど。知ってます?カラスって」
「私、用事ガ」
スネ文さんは、スルスルスルっと草むらの中へと消えていきました。
スネ文さんが向かった先を見ると、マメチュー先生の調剤薬局がありました。
「薬局に行ったのね。あたしの直感よく当たるのよ。あたしも薬局に行くつもりだったから、一緒に行けばよかったのに」
残念ながら彼女の直感はハズレです。
他人が見ればすぐに気づくと思うのですが、スネ文さんはおしゃべりな彼女から逃げただけです。
マメチュー先生が薬局の前で看板、のぼり出しなどをしています。
午前9時前。
マメチュー先生たちは開店準備をしているようです。
薬袋の準備、レジにお金をセット、他には待合室・調剤室の清掃などを行っています。
「では朝礼をはじめます」
朝礼では情報を共有するため、主に患者さんに言われたことなどを伝達します。
「今日きのこさんが朝一でお薬を取りに来る予定です」
その他、回収物などがある場合も、その都度朝礼で伝達します。
”異物混入”(入ってはいけない成分)した時は、ロッド番号、製造番号からみつけて回収。
マメチュー先生の調剤薬局は午前9時開店。
ですが朝から元気なご高齢の方は「9時開店」と言っても、その前に薬局内に入ってきてしまいます。
そのため今日も、開店前から患者さんの対応をする準備をしていたのですが。
今日は外から楽しそうな話し声が聞こえているだけ。
開店前に入ってくる様子はありません。
患者さんが集まって、会話に花を咲かせているのでしょうか。
気になったマメチュー先生は外の様子を確認してみました。
続きます