ポ村で一人。
誰にも気付かれることのない深夜…
“人を殺す薬”を作っている男カシュウ。
ポ村で作る理由は、致死性が高いと言われている毒草があると聞いたからだ。
噂レベルではあるのだが、ポ村の上空に浮かんでいるという。
空中に浮かび虫を捕食して、栄養を取り入れているため“食虫エアプランツ”と言われているらしい。
外に出ていたカシュウは、羽音に気付いてカラスの足をつかまえる。
「ああっ!アナタさまは」
「頼んだものは?」
「持っていないのだす」
「なんで?」
「見つけられなかったのだす。
虫が多いところにいると思って、探したの出すけれど…
ついワタスが虫を食べることに、夢中になってしまったのだす」
「……」
「ごめんなさいだす」
上空を見上げるカシュウ。
そこには星空が広がっていた。
「ごめんなさいだす」
鈍くさそうなカラスはまだ謝っている。
「星が落ちてきそうだ」
カシュウは星空から目をそらす。
「星だすか?」
ガラスも空を見上げる。
「きれいだす」
一方カシュウは見ていられないといったように、星空から目をそらしていた。
“星空恐怖症”
空が落ちてきそうな恐怖を感じる。
カシュウは“星空恐怖症”のうえ夜盲症、いわゆる鳥目である。
本来、夜の活動には向いていない。
カシュウは幼い頃…
日が落ちたため、辺りが見えづらくなり、道に迷った事があった。
その時、助けを求めるように空を見上げた。
そこにあったのは夜空に浮かぶ星々。
その星々に睨まれているように感じた。
この地球を監視するような無数の目に…
そして今…
自分に向けられるその監視の目が、さらに厳しくなっているように思える。
「どうかしただすか?
次はがんばるので、落ち込まんで下さいだす」
カラスはいつまでも、ピントのずれた事を言い続けていた。
続きます