“聞いた?秘密の言葉”
“秘密の言葉?なにそれ…”
“それを聞くとね。全身が…”
「USA来たぞー」
日曜日の午後。
まゆさんが、USAさん宅に遊びに来ました。
前から楽しみにしていた、まゆさんとの約束の日。
このあと一緒に食材を買いに行き、ご飯を作る。
そしてテレビを見ながらおしゃべりをして、夜まで遊ぶつもりでした。
この日のために便秘でぽっこり出たおなかを引っ込めようと、努力していたUSAさん。
「まゆちゃん…あのね。
今日、会えなくなった」
「USA?なにそれ。せっかく来たのに」
「ごめん。連絡しなくて」
「用事でも出来たわけ?」
「……」
「顔も見せないの?」
「……」
「ふうん。分かった。じゃあ帰る」
「ごめん」
明らかにいつもと違う様子のUSAさん。
(まゆちゃん、怒らせちゃったよね。
急に会えないなんて言ったりして)
自分で追い返したものの気になったUSAさんは、窓からそっと去り行くまゆさんの後ろ姿を、確認することにしました。
仕草や様子を見れば後ろ姿からでも、機嫌が分かるかもしれない。
しかし…
辺りを見回しても、まゆさんの姿が見当たりません。
(もう行っちゃった?速くない?)
…もしかして…?
窓の下を確認してみる。
するとまゆさんがしゃがみ込んで、USAさんの方を見上げていました。
「よっ!」
まゆさんはUSAさんの顔を意外にも、優しく見つめていました。
「まゆちゃん、あたし…」
USAさんの顔があちこち腫れています。
それはもう、まるで別人のよう。
「こんなんじゃ、外出られないよ。
恥ずかしくて病院にも行けない」
「いつから腫れてるの?」
「腫れたのは今朝だけど…」
かゆみに気が付いたのは昨日、土曜日の夜でした。
“ん?太ももかゆい”
そう思って見てみたら、小さな赤い点があったのです。
「ねぇ、まゆちゃん。
これなんだと思う?」
「う~ん。で?
その赤い点が、今日は腫れてたわけね?」
「うん」
昨日の時点では、確かに赤い点だった。
(何これ。虫刺され?ノミ?ダニ?)
かゆみに気が付いた時にはすでに、身体のあちこちに赤い点がありました。
「!!なんなの、これ?」
その日は腫れること無く、赤い点のまま。
よく分からぬままUSAさんは、そのまま眠ることにしました。
明日には治るかもしれない、そう思って…
なのに…
「眠れないっ、無理っ」
ゴロゴロゴロゴロ~
ベッドから転がり出て来たUSAさん。
「ひいいぃっ、かっゆ~!」
ベッドに入った途端、尋常じゃないかゆさが体中を襲う。
どうやら身体が温まって、もっとかゆくなってしまったみたいです。
「ああ、さすがに夜は冷えるわね…」
一人呟くUSAさん。
かゆすぎるため布団に入っていられず、USAさんはヒンヤリした床に転がって寝ていました。
「まゆちゃん、頭もかゆい。
手のひらもお尻もかゆいのー!」
「かいたろか?」
「ぬ、それは結構です。
それより…恥ずかしいよ。どうしたら良い?」
「その症状、蕁麻疹みたいだね」
「蕁麻疹?」
「原因に心当たりある?」
「原因…」
USAさん、考えてみます。
何しろ体中が、かゆみでこんなに腫れ上がってしまったのは初めてなのです。
次回へ続きます