マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

一番ちかしい人

“アンタッ。
そんな高い靴買ったの?
それ近所のスーパーで、980円で売ってたわよ”


USAさんは母親に5万3千円の可愛くて少しお高い靴を購入した事を、ラインに写真を添付し報告しました。

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「そしたら文句言ってくんのよ、まゆちゃん

自分のお金で買ったのに」


「一般人母だったら、大抵そう言うだろうね」


「うちのママが行くスーパーには、ぜっったい売ってないし」


娘にとって母は一番近くにいる。


遺伝子も一番近い。


なのにいつも娘の事を分かってくれない。



「まず“可愛いわね、素敵ね”
っていう言葉が欲しかったのに」


「人間、否定されるのは嫌だからね。

でも親って高い買い物をしたって聞かされたら、無駄遣いしていることにまず注目するもんだよ」


「そうなのよね~。

あたし調剤事務になる前は、芸能人とかになりたかったの」


「ほお?初耳だな」



「もちろんママに凄く反対されたけど。

そんな不安定な仕事はダメだって」



「身内であればあるほど、生活に関わることは口出ししたくなるってもんだよ。

USAがまず親っていうものの特性を、理解出来ていなかったってことが間違いだな。

あたしもこうしてアンタを否定している。

なんでも肯定して欲しければ、言いたいことは言えず、つい肯定してしまうタイプの知り合いを作るしかない」



「何でも肯定して欲しいなんて言ってないもん。

たまの買い物は、あたしにとってストレス発散なの。

セルフケアの一環なの。

それに文句言われたくなかっただけなの!」



「ならそう伝えればいい。

“言わなくても分かるでしょ”ってのがダメなのは、分かってんでしょ?

親という立場じゃなくても、友達の立場でもあまりにも突拍子のない夢物語を語ってこられたら相手が期待している言葉をかけてやろうとは思わないよ」


「そしたら否定されるだろう行為をしたら、誰にも話しちゃいけないって事?

でも高いものとか買ったら、聞いて欲しくなっちゃうんだもん。

前は否定してたけど、次話した時には“いいね”って言ってくれるかもしれないって、そう思っちゃうんだもん。

それってワガママな押しつけ?」



「あんたは自分の“ママ”とやらに共感して欲しいし、話しを聞いて欲しいし、理解して欲しい…
ってわけね」


「いつまでも子どもっぽいのかな?

あたしって」


親から過度な期待をかけられたり、構われすぎて困っている方がいる一方…

親に認めて貰いたい、理解して貰いたい、気にかけて貰いたいと思っている方も多いのでしょう。


「子どもの頃の母親との出来事が、ずっと心にこびりついているの…

それが原因なのかな?」



「子どもの頃の記憶?」



「あたしの話を聞いてくれてないなぁ。
理解しようとしてくれてないなぁ。
あたしのこと興味ないのかなぁって、思ったことがあってね」


「うん」


「あたしって特に人から褒められたことが、無かったの。

でも小学校に入りたての頃にあった授業で…」

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「クラスのみんなが左って答える中、あたしだけ右って言ったの。

みんなと違う意見を言うなんてドキドキしたけど、でも絶対に右だと思ったから。

そしたらあたしが思った通り、右が正解だったの。

あたしだけ正解!」



「凄いじゃん」



「うん、でしょ?
みんなに一目置かれたし、先生にも褒めて貰えた。

人生初めてのことだったから…

まぁまだ6、7歳だったわけだけど、すっごく嬉しくてすぐママに報告したの」


「うん」


「ママにも褒めて貰いたくて。

違うな。

ママも自分の娘が出来る子だって知ったら、喜ぶんだろうなって思って……」

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「でもねママったらあたしのその話を聞いてもね。

“ふうん”しか言ってくれなくて。

“凄いじゃない”なんて言ってくれなかった」


「………」


「すっごく悲しくて、寂しかった。

そんなに興味無い?って思った。

この人、子どもが期待している言葉が分からないの?って思った。

ママにはもう何も話したくないな…
そう思った」



「でもそれ…」


「なに?」



「USAが6、7歳の頃の話なんでしょ?」


「うん、そう」


「ひょっとしたら上手く説明が出来て無くて、ママの方が理解出来なかっただけじゃない?」


「え?」


「だって“100点とったよ”とか“かけっこで一番だったよ”っていうような、簡単に説明出来る話じゃないからさ。

今のあんたじゃなくて、幼いUSAがどこまで今の話を上手く説明出来たのかなって思ったから」


「えっあっ…」


“ラインッ”


「ママからラインだ」

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「ママったらもう、わざわざ靴の写真まで撮って」


「芯の所ではやっぱ似てるよね。
あんたら母娘は」


「うそぉ」


家庭にもよりますが、家族って…


血が繋がっているというだけで、理解しあっていると思っている。

だから深く話し合おうとは思わない。

血が繋がっているというだけで、他人よりも厳しく接してしまう。


家族だと言うことで、お互いつい甘え過ぎてしまう。



「人間関係って難しいよ」


「ホントよね~」


「患者さんとの関係もね」


「あたしそれならまゆちゃんより、上手にコミュニケーションとってると思う」


「確かに。

なら同じように、母親との関係も上手にすりゃいいじゃん」


「それが出来ないんだよね。

何故か…

ホント難しいわ、人間関係」