朝方。
「う~んっ」
起きる時間より、少し早めに目を覚ましてしまったUSAさんはつい伸びをしてしまいました。
「しまった!!」
「……!!!」
「うっううううぅ…やっぱり……うぅっ」
そろそろポ村にも、花が咲き始める季節がやって来ました。
USAさんに誘われたまゆさんは、お外で一緒にお茶中です。
「あったかいにゃね」
そしてにゃこさんも一緒。
緑が芽生え始めた、ポ村の風景を眺めながらのんびり寛いでいます。
「あんた、なにそれ」
「熱燗」
「……ああそう…」
「でもおつまみ忘れちゃったの。
佃煮食べたかったなぁ。
今の季節ならつくしの佃煮かなぁ」
「渋すぎない?」
「まゆちゃんつくしの佃煮嫌いでしょ?」
「食べたことない」
梅の花が散り沈丁花の香りが漂い始めたら、じきに桜の花が咲きます。
つくしだって生えてきます。
そして4月には牡丹、5月には芍薬、6月には百合の花。
花の女王たちが、順に花を咲かせていく。
特に牡丹は中国では国花…
花王として讃えられているそうです。
「牡丹って華やかで美しいよね。
前から思ってたんだけど、牡丹と芍薬って何が違うの?」
「そっくりだよね。
あたしもてんまから聞いたんだけど」
てんまさんは動植物に詳しい方です。
分類的に芍薬は草。
そして牡丹は木なのだそうです。
牡丹は枝分かれした枝に、花を横向きにして咲かせる。
そのためことわざのように、牡丹の花はまるで座っているように見えるのです。
そんな春の雰囲気を、少しずつ感じ始めた今日この頃。
USAさんにはまゆさんに、聞いて欲しい悩み事があるようです。
「あのね…まゆちゃん、相談が…」
「!!!」
丁度USAさんが話し始めようとしたその時、タイミング悪く村長に見つかってしまいました。
USAさん・まゆさんは慌てて逃走。
昼間っから外でお酒を飲んだりしたら、当然村長に睨まれてしまいます。
わけも分からずUSAさん・まゆさんと、一緒に走るにゃこさん。
(これって遊びにゃ?)
にゃこさんは遊びがはじまったのだと思い、嬉しくなってしまいました。
「あ~疲れたっ」
「村長振り切った?」
「でさぁ、まゆちゃん…」
「ん?」
にゃこさんはUSAさん・まゆさんの周囲を走り回っています。
「あそぼう、あそぼう」
「なっなに?」
「にゃことにゃことっ」
「なによ、にゃこちゃん」
「にゃほにゃほ」
「分かったわよ。遊ぶのね?
でもちょっとだけだよ」
「にゃたぁ」
「USAっ、悪いね。
その子と遊んでやって」
「…まゆちゃんは?」
「急に思い出す事ってない?
“卵買い忘れた”
とかって急に思い出すこと。
今買っとかないとまた忘れちゃうじゃん?」
「知らないわよ」
「というわけで卵…買ってくる」
「ねぇ、あたしの相談…」
「USAはにゃことあそぶんにゃあっ」
「分かってるってば。
じゃあまゆちゃん今日のお夕飯、あたしオムライスがいい」
「食べてくってか?」
USAさんはにゃこさんの面倒をみる代わりに、お夕飯の要求です。
お夕飯時
「これオムライス?」
出て来たのはチキンライスに、スクランブルエッグがのっかった食べ物。
「あたしに器用さを要求している?
でもトロトロに出来てるでしょ?」
「…マメチュー先生の、ご飯ばっかり食べてた事による弊害ね…」
「どこと比べとる…
あのレベルを要求すんな。
で?相談って?」
「もごもにゅご」
「あぁん?」
どうやら案外“とろとろスクランブルエッグオムライス”を気にいっていたらしく、USAさんは口いっぱいに頬張っていました。
「毎朝こむら返り?」
「そうっ。
もうほんっと痛くて。
こむらってる時がね、嫌で嫌で…」
「なったこと無いから、よく分かんないけど」
「そうなの?
めっちゃ痛いんだから。
ここまで痛くする必要ある?ってくらい。
一瞬、息が止まっちゃうくらい痛いの。
朝からすっごい嫌な気分…
それって変な病気だったりしないよね?」
「その可能性はあるはずだよ、確か」
「うそっ」
「ホント。
気になるんだったら、ちゃんと受診するといい。
痛みが数分たっても、なかなか治まらないとかそういうときは…
血管系の疾患とか神経系の疾患とか原因は色々あったはず」
「うそぉ…」
「ホント。
でもあんたの場合は単なる加齢じゃない?」
「ぜっったい嘘っ!!!」
【こむら返り】
こむら返りは妊娠中や、加齢によって起こりやすくなります。
運動中・就寝中に発症しやすいです。
加齢以外にもマグネシウム等が不足したことによる、ミネラルバランスの乱れが原因の場合もあります。
その場合はわかめ、青のり、てんぐさ、昆布、ひじきなどの海藻類にミネラルが豊富に含まれているので、積極的に摂取することをオススメします。
便に含まれる水分の量が増えるため、便がやわらかくなりスムーズに排泄が出来るようにもなります。
「でもさぁ、あたしさぁ。
わかめ食べるとさ」
わかめが消化されず、便がそのまま出て来てしまうのだという。
「USAはわかめのうんち出すにゃ」
「やだ、大きな声で言わないで」
「何でにゃ?」
「だからあたし、わかめ食べてないの。
あたしときたらもう、朝は一生こむらって生きていくしかないのかもしれない」
「お前の業なんだろうな。
それが…」
「あっさり受け入れないでくれる?」
「いないんだよ。
USAの腹ん中に、わかめを消化してくれる腸内細菌が」
「わかめを消化する腸内細菌?」
「日本人には比較的、その腸内細菌を持っている人が多いっていうけど…」
「お国によって違うんだ?」
「みたいだね。
別にわかめに固執しなくても、ナッツ類にもミネラルは豊富だよ。
乳製品からはカルシウム。
いも類からはカリウムも摂取するといいよ」
「ナッツも乳製品もお芋も好き~」
「そらぁよかった。
あと寝る前に水分補給。
水分不足もこむら返りが起こりやすくなる原因だから」
「今日帰ってあたしがすぐに出来るのは、寝る前にお水を飲むって事ね」
「それでも改善されないようなら、芍薬甘草湯を飲むといい」
「芍薬甘草湯?」
次回へ続く