前回のお話
USAさん宅で手料理を振る舞ってもらっているまゆさんですが、彼女は苦い味のものなど好き嫌いがとっても多い。
さらには薬剤師なのに、漢方薬を服用するのも苦手なようです。
「だって嫌いなんだもん。
そうだ、漢方っていえば実家の庭にさ、どくだみがたくさん生えてたのさ」
「どくだみってあの、すっごくくっさいやつ?」
「そう、そのどくだみ。
でも花は白くて可愛いやつ。
どくだみは、匂いと名前がよくないよね」
「確かに“どく“って名前につくのは嫌よね」
「で、我が家の庭師をやってた母親がさ“土から生えてくる生ゴミ“でも抜き取るように、どくだみを引っこ抜いててさ」
コンスタントに引っこ抜く母。
折を見ては引っこ抜く。
「匂いがなかなか、すごいものねぇ」
「どくだみもさ、抜かれているとまたすっごい匂いがして」
まゆさんの母親は抜いても次々と生えてくるどくだみを、憎々しく思っているようでした。
「とはいえどくだみは、生ゴミじゃなくってれっきとした漢方なんだよ」
「あら、そうなんだっけ?」
毒や痛みに効くから“どくいたみ“
生薬名:十薬(十の薬効があると言われています)
抗菌や消炎作用がある。
葉や茎をすりつぶして出た汁を塗ると、切り傷や皮膚病などにも効きます。
「ばあちゃんなんかはどくだみを使って、お茶を作ってくれてた。子供の頃の話だけど」
どくだみをお茶として飲むと、便秘改善に効果があります。
「あたしも一時期便秘だったときあったけど、まゆちゃんは慢性的な便秘だもんね」
「とはいえ元気一杯の子供の頃の話だから、便秘の自覚もなく、どくだみ茶が効いていたのかどうかはよく分かんなかったけどね」
「どくだみ茶は飲めたの?まゆちゃんって烏龍茶とかも進んでは飲まないでしょ?」
「ちょっと癖はあったけど飲めたよ。
美味しくは無かったけど飲めはした。
匂いの印象ほどには、ひどい味はしなかった。苦くもなかったしね」
「へぇ」
「残りのどくだみはお風呂にも入れた。
目の粗い木綿の袋に詰めて、お風呂に浮かべんの。肌トラブルに効くんだそうだよ」
「その辺にいっぱい生えてるどくだみだけど、たくさん薬効があるのね。
まゆちゃんもどくだみを色んな方法で活用するみたいに、苦手な漢方薬も工夫して服用できるように頑張ってみたら?」
「めんどくさいから嫌だ」
「オブラートに包んで飲んでみるとかさ」
「オブラートぉ?余計なお金、払いたくない」
「にゃふ?」
まゆさんとUSAさんのお喋りがうるさいため、目が覚めてしまったにゃこさん。
「おっきしたの?」
「にゃ!にゃこさんおっきしたにゃ」
「オブラートにお金かけるくらいなら、にゃこに美味しいご飯を買ってあげる。ねぇにゃこ?」
「それは買ってあげるといいよ。
じゃあさ、蜂蜜を混ぜるとかは?
養蜂家のてんまちゃんに貰ってさ」
「あたしにとっては、そんなことしてもまずいもんはまずい」
「んもうっ、扱いづらい患者さんみたい。
そうやって人の話を否定しかしない人は、嫌われるよ。
マメチュー先生も悲しむよ」
「えー、うそ。そんなのかわいそう。慰めといて」
「もー!
…内緒にしておきます」