マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

脳食い虫 その2

前回の話

基本、虫が嫌いなまゆさん。


昨晩見た“脳食い虫”というDVDの気持ち悪い内容を思い出して、イライラ中です。

そんなまゆさんの前に現れた女性。


窓の外から手を振っています。

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「まゆちゃん」

 

「てんま。急にどうした?」

 

てんまさんを迎え入れようと扉を開けた途端、なんと蛾が部屋の中に入り込んで来ました。


蛾も大嫌いなまゆさんは、声も無く驚く。


「…………!!!」


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てんまさんは無邪気に、蛾との出会いを語ります。


「ああ、あの子?
歩いてたらね。
あたしの傘に、雨宿りしに来たの」


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「やっぱりみんな雨に濡れるのは、嫌なんだねぇ」
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「家主の許可無く蛾を、連れて来るんじゃ無い」


そのまゆさんの様子に、恐怖を感じた蛾は、慌てて外に飛び出して行きました。


「お前って…
生物ならみんな好きなのか?
細菌も生物だけど?
万物全てを愛するのが優しさか?
お前は、そういうとこ悟空と一緒だよな」

 

早口で何やら口走るまゆさんに、ポカンとするてんまさん。


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「あの男は見ず知らずの人間ばかり大事にして、自分に近い存在の事は、ほったらかしで構わない。そんな奴だ」

 

「う~ん、じゃあまゆちゃんはベジータ?
家族大事にしてるよね、あの人。
でもまゆちゃん、悟空好きじゃなかったっけ?」

 

「好きだからもどかしいっ」

 

「あたしもさぁ、どっちかって言ったらベジータタイプだと思うんだけどな」


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「知らない人間に対する優しさは、薄っぺらなんだよな。お前はな」


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「だからお前の感情も分かりにくい。
ホントは感情あるならもっと表に出してみろ」

 

「う~ん、そんなまゆちゃんみたいに、誰にでもゴリラみたいな態度とれるかなぁ?」

 

「誰がゴリラだっ」

 

まゆさんは、少し言い淀みながら話を続けます。


「てんまのそういう所…
薬剤師としてちょっとダメだと思うぞ。
繊細なタイプの患者さんには、気付かれる。
その患者さんの不安な気持ちに寄り添っている振り…」

 

「振り…?」

 

「自覚ないのか?」

 

何か言いたげに、ジッとまゆさんを見つめるてんまさん。

 

「…でも…
私にだって恐いものならありますよ」

 

「何?言ってみろ」

 

「今のカリカリしているまゆちゃん」

 

「…………はぁー…」


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「アカシアのハチミツだよ。

今日はこれを届けに来たの。

でもまゆちゃん…」

 

「あ?」

 

「蛾の事は、ごめんね。
怖がらせちゃったんだよね」

 

「そう改めて言われると、あたしがビビりみたいじゃねえか」

 

「こないだね、ナメ江さんに会ったの。

電車の中で。

椅子に止まっている昆虫見て、怯えてた…………」

 

「アイツはビビりの権化みたいなもんだからな」

 

「子供の頃…
お友だちにカエルを持たせて、泣かせちゃったことがあったんだ。
そんなに怖がるなんて、夢にも思っていなかったから…
いくつになっても、おんなじ事を繰り返してたんだね。私って」

 

「全くその通りだな」

 

まゆさんはフォローするという事を知らないようです。


特に気にしてはいないてんまさんは、クッションの下に置いてあったDVDを取り上げる。


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「あれ…虫の物語?」


「知ってっか?脳食い…
嫌いなんだよ、あの集団。
ゾッとする」

 

「ユスリカのことでしょう?」

 

「ユスリカ?脳食いの本名?奴ら血吸うのか?」

 

「ううん、あの子たちはね。
血を吸うために、集団で待ち伏せしているんじゃ無いの。
あれは女の子との出会いを待っている、男の子たちの集団なの」


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「むさ苦しいな、おい」

 

「でもたった数日の命だよ?

そんなに毛嫌いしなくても…………」

 

「死の直前の奴に急に、優しくし出す奴か、お前は」

 

「それはまゆちゃんも優しくしてあげようよ。
あのね、ユスリカの赤ちゃんはね。
水質や土壌の状態を良いものに保ってくれてるの。
…ねぇ、どう?この情報」


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「赤子のまま逝け」

 

「あとね」

 

「まだ言うか」

 

「大人のユスリカの死骸を吸い込むと、アレルギーになったりするの」

 

「ダメじゃねえか」

 

「いい所も悪い所もあるよ、誰だって、あるんだよ。…まゆちゃん」

 

まゆさんの事を、指でチョンとつつくてんまさん。


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「…………そういうクッソみてぇな事を平気で言うところ。
しょうまにソックリな?」

 

てんまさんは、小さく微笑む。

 

「姉妹でお世話になります」

 

「はんっ」

 

ずっと二人のやりとりをハラハラしながら見ていたにゃこさんは、やっとホッとした気持ちになれたようです。