マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

みんなで音楽セラピー

しょんぼりポテポテ、にゃこさんがポ村を歩いています。


何かあったのでしょうか?


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どうやらまゆさんに構ってもらえず、拗ねてしまっているみたい。


“まゆさんには、お仕事がある”


にゃこさんにも分かってはいるのですが、やはりちゃんとは理解出来ていないようです。


「いいんにゃ。

にゃこさんにだって、お仕事があるんにゃから」


そんなことを言っているにゃこさんですが、今日はお仕事等ありません。



“お仕事があるっ!”
言葉とは裏腹に、とぼとぼとと歩くにゃこさんは、遠くから聞こえてくる歌声をキャッチ。



「にゃほ?」


聞き覚えがあるあたたかな声。


「てんまちゃんにゃっ」


ショボンとしていたにゃこさんは、てんまさんの歌声を聞いた途端にテンションアップ。



「てんまちゃんに遊んで貰うにゃ。

まゆちゃんが遊んでくれにゃくたって、にゃこにはてんまちゃんがいるんにゃっ」



とぼとぼと歩いていたにゃこさんの歩くスピードが、どんどん上がっていきます。



「どこにゃろ?
てんまちゃんはどこにゃろ?

まだ遠いにゃかな?」



ねこさんのよく利く耳と鼻を駆使して、てんまさんを探します。


先程から聞こえている歌声の元に、どんどん近付いて行く。



「てんまちゃんのお歌…
大好きにゃ」



まだ出会えていないのに、すでに楽しくなってきてご機嫌のにゃこさん。


何やらひとりで歌い出しています。


ねこさんは自分にとって、心地よい周波数の歌は大好き。



ただし人間と一緒で、不快な周波数の歌は嫌いなんだそうです。




「にゃこちゃん?」

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突然声をかけられたにゃこさんはビックリ。


「おや?にゃこさん?」


目の前に現れたのは、てんまさんと村長でした。



途中からお歌を歌うのに夢中になっていたにゃこさんの歌声が、2人に聞こえてしまっていたようです。


「可愛い格好して…

お仕事行くの?」



「おしごと?

ああ、今日はもういいんにゃ。

てんまちゃん、にゃこと遊んでにゃ

にゃこ…さみしいんにゃ」




「ではにゃこさん、私と遊びましょう」


「にゃも?」



今日、てんまさんが歌っていた理由。


もう春になるというのに、いつまでも出て来てくれない虫や鳥たちを呼んでいたのでした。



「にゃこちゃん、寂しいの?

一緒ね。

わたしも寂しいんだ」



例年ならぽかぽか陽気につられて、すでに虫たちがポ村を楽しげに飛び交っている時期。


鳥たちの美しい声も聞こえてきません。



“お話しよっ
寂しいよ…”


虫や鳥たちに声をかけるも、反応がありません。


普段なら春になるとてんまさんの歌声につられて、虫も鳥たちも姿を見せるのに…


養蜂業をしているてんまさんは、ミツバチたちが姿を見せてくれない事に関しても気がかりでした。



冬、ミツバチたちは冬眠するわけではなく、おうちの中で体を寄せ合い、押しくら饅頭をして温め合いながら過ごしています。


「もう外は、十分あったかいと思うんだけどなぁ」



てんまさんは、そんな虫や鳥たちの姿を見るため再び歌います。


天岩戸に閉じこもってしまった、天照大御神の興味をひかせるみたいに…



「にゃんにゃかにゃ~」


にゃこさんもつられて歌っています。

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「にゃも?」


「どしたの?にゃこちゃん」




にゃこさんは一点を見つめたまま、固まっています。


「にゃんかきこえる」



ねこさんのよく利く耳が、何かの音をとらえる。


「悲しそうな声にゃ…」


「声?」


“悲しそうな声”に向かい、歩みをすすめるにゃこさん。


「ここにゃ」


にゃこさんは、岩と岩の間を覗き込みました。



「にゃんかはさまってる」



「あら?
赤ちゃん!」


てんまさんは岩の間に挟まっているものを、慌てて取り上げます。



「いもむしにゃ?」

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「可哀相に。
こんなところで…」



「落ちちゃったんにゃね?
こわかったにゃ?」


「ケガしてない?
あんよ動く?」


いもむしには脚(前方)と腹脚(真ん中)と尾脚があります。



いもむしさんにケガは無かったものの、こわかったのかピィピィと泣いています。



「ねぇ、いもちゃん。
ムカデさんって何で脚が多いのか知ってる?」


「ピィピィ」


「昔の昆虫はね、み~んな足が多かったんだよ。

ムカデさんたちは、変化を望まず今も変わらず昔の姿を残しているの」


「ピィ…」


「よしっ!

にゃこが歌ったげるにゃ」



「おや?

泣き止んだようですね」



村長が言うとおり、いもむしさんはにゃこさんが歌う前にピタリと泣き止んだようです。





「あっ」

「にゃっ」

「おおっ」



いもむしさんが泣き止んだ途端、今度はミツバチたちがいっせいに空を舞う。


そしてそれを合図のように、鳥たちも無数の昆虫たちも一気に空を飛び交う。


「にゃんか出たっ!

いっぱい出たっ!」



どうやらいもむしさんの泣き声を聞いて、何事かと不安になり他の生物たちは怯えてしまっていたようです。


「みんにゃっ

いもむしさんは大丈夫にゃ」



「この子はすっかり元気だよ~」



村長も鳥たちが舞い始めて、嬉しくなったか自身も楽しそうに飛んでいます。


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ようやくポ村にも春が来たようです。