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前回のお話
今日はマメチュー先生、トビーくん、クラゲさん、ヤマオというメンバーでポ村の鉱物を採取しに来ました。
この鉱物は加工により薬になったり、ライトになったりするという、優れものなのだそうです。
そんな時、ポ村にカゲが現れる。
カゲとは、負の感情のカタマリの化け物。
その存在をまともに目撃すると、心にマイナスの影響を及ぼすと言われています。
御神木のそばにある大きな十字架を使って、マメチュー先生はヤマオと協力し、カゲを倒そうと思ったのですが…
「ヤマオさん?」
ヤマオはすでにカゲにやられたのか、ショボンしてます。
どうやらカゲが現れる直前、トビーくんに噛んだガムを腹巻きに入れられていたのも原因の一つようです。
「ヤマオさん!?」
「…」
「仕方ありませんね。今回は屋内に避難しましょう」
ヤマオは元々とても繊細なのです。
マメチュー先生は、まだ遊びたそうなトビーくんの手を引いて歩きます。
「マメ、帰っちゃうの?」
「ええ、今日は帰りましょう」
「えー、せっかく来たのに…」
「クラゲさん、トビーさんをお願いします」
小さな子どもさんは、クラゲさんが素早く安全な場所まで連れていってくれました。
残されたマメチュー先生は、ヤマオを励ましながら共にゆっくりと歩いています。
とはいえこれ以上長く外にいると、カゲのせいで心へのダメージが深刻になってしまう。
「ヤマオさん、大丈夫ですか?」
ヤマオは首を横に振っています。
人は”大丈夫?”と問われると、多くの人が大丈夫じゃなくても”大丈夫”と答えてしまいがちです。
なのに首を横に振っているところを見ると、相当心にダメージを追っているのではないかと思われます。
ゆえにこのまま長くとどまっているわけにはいかないのですが、だからといってヤマオを急かすことも出来ません。
ヤマオは暗い表情で俯き、足取りも母親の体重のように重いようです。
”ヤマオさん…どうしましょう。どなたかヤマオさんを明るく照らしてくださればいいのですが…”
そうだ。
先程まで薄暗かった周囲が、ヤマオの顔が、柔らかく暖かな光に包まれました。
「ヤマオさん、職人さんに作ってもらった鉱物の灯りです。きれいですよね。明かりをみると少し安心しませんか?」
”無力な私にはなにもして差し上げられないけれど、この光なら”
「…」
ヤマオは首を縦に振っています。
どうやらヤマオの暗い心に、少し明かりが灯ったようです。
実際、オレンジ色の光は人をリラックスさせる効果があるのだそうです。
辺りを明るくして、かつ心も明るくしてくれる光。
「…」
「あら?鉱物の灯りで気付きませんでしたが、空が明るくなっていますね」
時を忘れるように柔らかな鉱物の明かりを見ていたら、いつの間にかカゲもポ村からどこかへ去っていったようでした。
「ではここで少し休んでから、のんびり帰るとしましょうかね」
ヤマオはうなづいています。
「トビーくんとクラゲさん無事、家についたころでしょうか?」
ヤマオは再び、ゆっくりとうなづいていました。
もう、慌てて帰らなくても良いのです。