マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

それぞれの節分

節分の今日、まゆさん・てんまさんはマメチュー先生と一緒に豆まきをします。

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ポ村では節分の日の夕暮れ時になると、各々の家に鬼が訪ねてきます。


鬼が来る日は人々の心に悪影響を与えるという、カゲも近寄りません。


なのに今日は肝心の鬼がなかなか現れません。


「もうすぐ日が暮れるっていうのに」



悪疫を退散させ、無病息災を願うという節分。


でも鬼がいなければ、豆まきは行えません。


「うん、もうっ!!
鬼に屋根掃除をしてもらおうと思ってたのに!」


「まゆちゃんたら、お掃除屋さんじゃないんだから…」


身体が大きいため、毎年色々なお手伝いを鬼にお願いしています。


普段身体が大きな人にやって貰いたい事は、ヤマオさんにして貰っているのですが、節分の日には鬼にも手伝って貰います。



特に毎年手伝って貰っているのは、御神木の実の採取です。


冬の終わりから、春先にかけて実る御神木の実。


御神木はとても大きく、そして実も大きくて重たいので、鬼に採取して貰っているのです。

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採取した実は村長のいる村役場に届けて、しばらく飾っておきます。



そしてポ村にカゲが近寄らないように、村人に悪影響を与えないように御神木の実に祈りを捧げます。




そんな鬼は普段、人の心の中に棲んでいます。



人の心に巣くう、邪なエネルギーを吸い取って生活をしています。


ただポ村に棲む鬼は、お腹がいっぱいになれるほど、人の心から邪なエネルギーを吸い取れないみたいです。


そんな鬼が節分になると、具現化してポ村に現れます。


豆まきの鬼役をしてくれるのです。



豆まきで散らかった豆は、鬼が食べてきれいにしてくれる。


鬼は節分の豆を食べると、一年分のエネルギーをため込めるようです。




「まゆさん、節分のお豆の用意が出来ていますよ」


「えっ」


年の数プラス1食べるという節分の豆。


「まゆさんはこのお豆、お好きじゃないんですよね。

でもとっても身体に良いんですよ」


節分に食べる大豆は、たんぱく質やビタミン類、ミネラル類が豊富に含まれています。

さらには老化も防いでくれる。


「老化を防いでくれる、年の数だけ食べる豆。

年寄りほど食べなきゃいけないのってそういう意味?」


「まゆちゃん、いっぱい食べなきゃいけないね」


「てんまの方が一つ年上でしょうがよ」


「つーんっ」


プイッとしているてんまさん。



「…この豆ってさぁ。
口の中にいつまでも残るしさぁ。

節分になるとわざわざ給食にまで出て来て…

ホントあんま好きくない」


「私は大好きなんですけどねぇ」


「えぇ?大好き?
あれを大好きなんて人が、この世にいるんですか?

うそぉ…」


鬼に投げつける為だけに、存在する豆だと思っていたまゆさん。


トスン、トスン…


どこから物音が聞こえてきました。



いち早く気付いたてんまさんは、薬局の外に出て様子を見に行きます。



「鬼さんだ!こんばんはっ」


「モフォォオォ」


どうやらようやく、マメチュー先生の薬局に鬼が到着したようです。


「お豆いっぱい、マメチュー先生が用意してくれたよ。

お腹いっぱいになったら、お持ち帰りの分もあるって」


「フォオッ」


「鬼来たっ?遅い遅い」

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「ねぇねぇ。うちの屋根、掃除してっ。
年末に村長が、掃除してくれなかったの!」


「ちょっとまゆちゃん。
せっかく来てくれたんだから、少し休ませてあげようよ」



「ちぇ~、じゃあはい。
お豆あげるー」


「だからそれは、まゆちゃんの分でしょ」


去年食べたお豆で得たエネルギーはとっくに無くなってしまったのか、鬼は痩せ衰えヨボヨボ歩いています。


「だいじょうぶ?
お水もあるからね」



「モフォ」

薬局の外に座り込んだ鬼は、貰ったお豆をゆっくり噛みしめるように食べています。


「ねぇ、鬼ぃ。
それ食べたらさ、このかぶり物かぶって」


元々鬼なのに、鬼のかぶり物を被らされています。

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「豆まきの時の仕草はさ、もっと鬼っぽくしてね」


「モフォ…」


まゆさんから色々な注文を受け、ゆっくりお豆を食べられない様子の鬼。


「じゃあほら、あ~んして」


「モフォ?」


ジャラッジャララッ


まゆさんは鬼の口を目がけて、豆をまきます。




「おには~そとっ」

ジャッ!


まゆさんはてんまさんに、不意打ちで豆をぶつけられました。


「痛った!てめぇ、やるじゃねえかよ」


「後で服の中から、いっぱいお豆が出て来た方が負けね」


「はっ、面白れぇじゃん」


「負っけないぞぉ!」


そこへマメチュー先生が、良い匂いをさせながらやって来ました。


「まゆさん、お豆の炊き込みご飯なら食べられますか?」



「ぬっ?炊き込みご飯?
好きです、好きですっ」


「まゆちゃん、ご飯党だもんね」


「良い匂いだぁ」


「鬼さんも食べるかなぁ」


「…あれ?鬼は?」


「先ほど他のお宅に向かわれましたよ」


「えー!なんで?なにそれっ。
屋根の掃除っ」

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「にゃんまーにゃまままー」

その頃のにゃこさん。


「鬼は外、福は内」
と言いたいようですが上手く言えていません。



ねこさん流の節分のかけ声です。


このかけ声は鬼ごっこの合図。



まゆさんたちの節分に参加させて貰えなかったにゃこさんは、ねこ森町に来ていました。


これからみんなで鬼ごっこをする所です。



“節分のお豆はねこさんには危険!”

節分のお豆はねこさんにとっては小さくて丸呑みしてしまいやすいので、消化不良を起こす原因とのこと。


なのでにゃこさんはねこさん用に、節分の代用品として猫ボーロを貰いました。



「鬼のかぶり物をしているねこさんが、鬼にゃからね」


ねこさんたちの鬼ごっこ。



タイムアップ時に鬼だったねこさん以外が、猫ボーロを貰えます。

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鬼ごっこが終わったら次は桃の弓矢を持ってみんなで、グルグル歩き回って悪い病気を追い払います。


ポにゃさんの病気も払って貰えるかな?



みんな、それぞれの節分。



地方によっては大豆ではなく落花生を投げたりと、節分の行い方は違うようです。



例え節分の意味は分からずとも
どんな形でも
こうして伝統行事守り続けていくのは、とっても良いことですよね。