「まゆちゃん、サンタさんってなんにゃ?」
にゃこさんからの唐突な質問です。
「なに?またどっから聞いてきたの?そんな言葉」
「サンタさんってなんなんにゃ?!」
サンタさんはクリスマス前夜になると、いい子にプレゼントを配るというおヒゲが白いおじいさんです。
「昔のいい人がモデルになってるんだって」
「モデル?」
「ああ、何でもない。
噂レベルではどっか、寒い国に住んでいるらしいよ」
「にゃほぅ。
まゆちゃん、クリスマスってなんにゃ?」
「イエスって人が生まれたことを祝う日」
「…お誕生日会にゃ?」
「降誕祭って言うらしいけど、似たようなもんじゃない?」
日本ではざっくり言うとツリーを飾って、チキンやケーキを食べて、プレゼントを貰う日です。
「チキン!プレゼント!」
にゃこさんが興味を引くワードが、出てきてしまったようです。
「にゃこさんはいい子?
にゃこさんの所にサンタさんくる?」
「う~ん。
ねこさんたちは、いい子とかいい子じゃないとかないからなぁ」
ねこさんはいい子だろうがなんだろうが、そこにいるだけで何でもいいのです。
「??それってにゃこさんの所には、来ないってことにゃの?」
「どうかなぁ。
プレゼント欲しいの?」
「にゃし!
だからにゃこさん、サンタさん見つけに行ってくるにゃ!
プレゼント貰って、ねこ森町のお友だちにプレゼントあげるんにゃ」
「そっか、プレゼントあげたいのね?
いつもお世話して貰っているものね。
でもサンタさんなんて、どうやって見つけるの?」
「にゃ?まゆちゃん知らないにゃ?」
「知らないよ。
イブの夜にトナカイのソリに乗って、シャンシャン鈴を鳴らしながら、空を飛んで来るってこと位しか…
まぁでも、家で大人しく待っていれば今年はサンタさん、来てくれるかもしれないよ?」
「お空を飛ぶにゃ…」
まゆさんの話は聞かず、上の空のにゃこさん。
「あれ?にゃこどこ行くの?」
「ちょっとにゃこさん、用事があるのにゃ」
にゃこさんはサンタさんを確実に捕まえる方法を考えた末、捕まえ方を知っていそうな人に聞きに行く事にしました。
空飛ぶサンタさん…
捕まえ方を知っていそうな人…
「!!」
空を飛べる妖精のシルプさん。
彼女はポ村の美容師、ハイエさんに片思いをしてる妖精の女の子です。
彼女も人見知りで人前には、ほとんど姿を現しません。
でもにゃこさんとてんまさんには、気兼ねをしないようです。
ポ村で妖精さんがいそうな所。
人があまり行くことが無い、森の奥の奥にある少し開けた場所。
にゃこさんはサンタさんの捕まえ方を聞くために、小さなあんよでテコテコ森の奥に向かいます。
途中で休憩しながらも、テコテコ歩いて行きます。
「何してんの、あんた?
あたしを探してる?」
「にゃ!」
にゃこさんが探していたシルプさんです。
「何よ、久しぶりじゃない。
ハイエさんは元気?どうしてる?」
「こないだまゆちゃん、髪切って貰ってたにゃ」
「まゆ?あの女?」
「にゃこさん、聞きたいことがあって来たんにゃ」
「何よ…」
「サンタ?自分で探すの?」
「にゃ!」
「子どもねぇ。
捕まえたいなら待ち伏せしたら?」
待ち伏せ??
「サンタがいい子の所へプレゼントを届けに行く所を待ち伏せして、とっ捕まえるのよ。分かる?」
「にゃ、にゃこさん、ちゃんと分かるにゃ!」
「そんでプレゼントを強奪するのよ」
「ごうだつ?」
「分かる?」
「わっ、分かるにゃ」
「まぁ“欲しい”って言っても、サンタがプレゼントをくれなかったらね。
最終手段よ」
「にゃ!」
明らかにいい子ではない者のやる所業です。
でもいい子かいい子じゃないかの概念が無いねこさんは、よく分かっていないので何でも受け入れてしまいます。
いいことをシルプさんに聞いたと、にこにこ顔で帰宅するにゃこさん。
これでサンタさんからプレゼントが貰えます。
「あと何日寝たら、サンタさんに会えるにゃろか?」
にゃこさん毎日そわそわ。
誰の目から見てもそわそわ。
「にゃこさん、にゃこさん」
「にゃも?」
「ぼんやりしてるけど今日イブだよ。
サンタさんが出現する日だよ」
まゆさんがにゃこさんに声をかけます。
「にゃ!今日にゃ?
今日サンタさんが来る日にゃ?」
にゃこさん一層そわそわわくわくうろうろと、落ち着きが無くなります。
そして日が暮れた頃…
「まゆちゃん、お散歩してくるにゃ」
「え?家でサンタさんを待つんじゃ無いの?」
「ちょっとだけにゃ」
「雪積もってるよ?」
「ちょっとだけ行ってくるにゃから」
「全く…」
にゃこさんは、いそいそと出掛けてしまいました。
【にゃこさんサンタ捕獲計画】
イブの夜にお散歩に行く振りをして、サンタさんを待ち伏せしに行く。
そして捕まえて、挙げ句の果てにプレゼントをごうだつする。
………。
にゃこさんの計画なんてもちろん上手く行かないのですが、もう少しお話は続きます。
こんな雪が積もっている夜に、出掛けたこと等ないにゃこさん。
なのでまゆさんに、何かあると勘づかれています。
そんなことにはなにも気付いていないにゃこさんは、こわごわと雪の夜に出掛けて行きます。
イブの夜の静かで不思議な雰囲気。
雪はやんでいますがモッサリと積もっている為、いつものポ村が違って見えます。
雪をモスモスと踏みながら、サンタさんが来そうないい子の家を目指します。
ポ村に住む子どもたちのおうち。
トビーくん、ペンネくん、りーちゃん、ココアちゃん…
どの子のおうちが、ここから一番近いでしょう。
モスモスモス…
真っ白い雪原にねこさんの足跡が、テンテンとついて行きます。
「にゃ?
お星様が落っこちてるにゃ」
雪の上に落ちているお星様。
ツリーのてっぺんに飾るトップスター。
「何でお星様落ちちゃったんにゃ?
あっちにもにゃんかある」
今度はツリーに飾る、キャンディケーンが落ちていました。
それらを辿って行くと…
ポ村にある不思議なツリーを発見。
プレゼントがモミの木になっています。
「サンタさんの木にゃろか?」
近くに住んでいるかもしれない、そう考えたにゃこさん。
でもこの木になっているプレゼント…欲しい!
ジャンプしてモミの木になっているプレゼントを取ろうとしますが、全然届きません。
「にゃふう」
やっぱりサンタさんから、プレゼントをごうだつする事にします。
サンタさん、まだお空を飛んでいにゃいかな?
お空を見上げて見ると、雪があるのに落ちてこない。
「変にゃの」
にゃこさんは、夜空に浮かぶ幾千もの星が雪に見えているみたいです。
いつもお星様を見ているのに、思い込んじゃっているのかな?
夜空に浮いたままいつまでも落ちてこない雪。
サンタさん…
もっともっと夜遅くにならないと来ないにゃの?
次回へ続く