前回のお話
画家のトウキさんは、ポ村の御神木の元で涼んでいました。
その近くでは、ポ村特有の“モノ”土壌を悪い状態にする“悪しきもの”が、生まれ出てこないよう、ひとり奮闘しているどろちゃんが…
しかしどろちゃんの抵抗むなしく、悪しきものが土の中から出てきてしまいました。
悪しきものは生まれ出てすぐに、素早くどろちゃんに向けて強烈な匂いの泥団子を投げつけます。
泥団子ぶつけられてしまったどろちゃんは、びっくりして思わず退散。
「にゃぶぅ」
それでも追いかけてくる悪しきもの。
まんまるでも、そこはねこさん。
悪しきものを引き離し、うまく巻きました。
木の下でひとり。
どろちゃんは先ほど、泥団子をぶつけられた身体を、ゆっくりと綺麗にしています。
ぺちゃぺちゃぺちゃ
”守ってあげられなかったにゃ”
何にも出来ず…ポ村を守ってあげることも出来なかった。
どろちゃんは、なんだかとっても悲しくなってしまいます。
悪しきものにぶつけられた泥団子の泥も、なかなかとれません。
「ぶぶぅ」
悪臭がする泥団子のせいで、どろちゃんは少し気持ち悪くなってきました。
一方どろちゃんから比較的近い場所にある御神木の下で未だ仕事をせず、くつろいでいたトウキさん。
そんな彼の前にどろちゃんに泥をぶつけるため、しつこく捜していた悪しきものが現れました。
悪しきものはトウキさんの存在に気が付いて、彼の方に泥団子をもって走り寄っていきます。
バシャンッ
その悪しきものに向かって、トウキさんは表情を変えることなく、高圧洗浄機並みの勢いで瞬時に、御神木の聖水をぶっかけていました。
泥団子は聖水により浄化され、きれいな土に、そして悪しきもの自体も消えていきました。
そこへ気持ち悪さがなくならないどろちゃんが、自分の基地(クッション)で休むため、とぼとぼと歩いて来る。
とぼとぼとぼとぼ
どろちゃんが普段、お布団代わりに使用しているトウキさんが近くにいることにも気づかず、下を向いて歩いていきます。
トウキさんはとぼとぼ歩くどろちゃんから、妙な匂いがしていることに気がつきました。
「ねこねこ」
トウキさんはどろちゃんを呼び、手招き。
「にゃぶ?」
どろちゃんはトウキさんに気が付いたのですが、自分から変な匂いがするため、近寄ることが出来ずにいました。
そのため仕方なく、トウキさんの方からどろちゃんの元に向かいます。
「ぶ」
泥だらけのどろちゃんを、じっと見つめるトウキさん。
トウキさんは絵を描く時のように、どろちゃんの泥を聖水を含んだ筆で落としていきます。
サササッ
「にゃぶぶ」
どろちゃんは気持ちよさそう。
「ぶぶ」
サッササッ
お鼻もしっぽも肉球も、全部筆で泥を落としていきます。
トウキさんも、なんだか珍しく楽しそうです。
小さな筆なので、泥を落とすのに時間がかかる。
だから綺麗になるのも少しずつです。
それでもどろちゃんはきれいに落としてもらうまで、大人しくされるがままになっていました。
どろちゃんはどうやら、ママに身体を舐めて貰っていた事を、思い出していたみたい。
ママに守ってもらっていたあの頃のこと。
幸せだったあの頃。
でも…
これからはちゃんと守る側になりたい。
ポ村好きなねこさんは、そんなことを考えているようでした。