ポ村を、そしてポ村の住民を守るのがお仕事の村長。
いつも通りにポ村の隅々をパトロール。

さらにポ村の密かな有名人、画家であるトウキさんのお世話もしています。
トウキさんが使用している画材を、いつでも使えるようにしているのは、実は村長なのです。
画材を新品に取り換えたりもしています。
村長がお世話をしているトウキさんは今、ポ村の御神木の下でぼんやりと涼んでいます。
村長は無口なトウキさんからは、本人の情報をうまく聞き出すことが出来ていません。
でも、彼を見ていれば分かることもあります。
”トウキさんは御神木が好きなのかも”
そう判断した村長。
絵筆を洗うときに使用するお水は汲みに行かず、トウキさん自ら汲みに行ってもらうことにしています。
御神木の清浄で美しいお水。
悪しきものを退治する時にも使用できる、聖水でもあります。
「では私はこの辺でそろそろ」
トウキさんのお仕事の邪魔をしないため、村長は静かに立ち去っていきました。
そのころ、御神木から比較的近くのふわふわした草むらの中で、気持ちよさそうに眠っているどろちゃん。

ポ村でひとり暮らすどろちゃんは、こういう何気ない日常が幸せなのです。
しかしどろちゃんの元に、どこからか嫌な匂いが漂ってきました。
おかげで眠りを邪魔されてしまう。
どうやらどろちゃんの近くで、悪しきものが土の中から生まれそうになっていたため、匂っていた模様。
悪しきものとは腐敗臭を伴った、状態の悪い土の中から生えてくる、ポ村特有の”モノ“です。
「にゃぶぶ」
それに気づいたどろちゃん。
生まれ出てくる前に、処理しなくてはと思いました。
何しろ悪しきものは土壌をさらに悪い状態にし、ポ村の自然を破壊してしまう可能性があるのです。
どろちゃんはポ村が大好き。
悪しきものに汚されたくない。
村を守ってあげたい。
御神木の元に湛える、清らかなお水を撒けば簡単に消滅する悪しきもの。
だけどねこさんであるどろちゃんには、それが分かりません。
だからどろちゃんができる精一杯で対応します。
生まれてくる前に、踏んづけたり、引っ掻いたり、噛みついたり。
それでも土の中から、悪しきものがモリモリと出てきてしまいます。
だからどろちゃん、必死で噛みつく。
「にゃぶぶぶぶっ」
「にゃぶぶぶ」
「ぶぶ!」
必死です。
続きます