ポ村に住む画家のトウキさんは、昼間頭痛がひどくなることが多く、痛みが出ている日中は、身体を動かさず目を閉じていることが多いです。
そんな風に頭痛が発生した日は、夜に眠ることが出来なくなるため、そのまま起きてぼーっとしている。
今日も頭痛がひどかったため、ようやく痛みが治まったこの遅い時間、ぼんやりとポ村の星空を見上げています。
実はこれはいつものこと。
ついこの間も同じようなことがありました。
トウキさんにとって、太陽の眩しい日中よりも、この時間の方が落ち着くようです。
ただ、静かすぎることがちょっと気になるところ。
夏や初秋はいろんな虫の気配や声がするので、生物が身近にいることを実感できます。
しかし虫が眠りに入る今の季節、村全体がだいぶ静かになってしまいます。
夏は多少鬱陶しく感じる虫の声ですが、聞こえなくなると不思議とせーせーするとまでは思わない。
静かすぎて世界が止まっていることに気づかず、過ごしているかもしれないなどと考える。
でも大丈夫。
星は動いています。
だから世界は止まっていないのです。
その頃…
本日の夜もひとりぼっちのねこ、どろちゃんは秋の夜の肌寒さにより目を覚ましてしまいました。
どろちゃんとは、ポ村でひとり自由に暮らすねこさんです。
空を見上げて思います。
夜はまだまだ始まったばかりなのだと。
でもねこさんは本来夜型です。
「起きちゃったから、仕方ないにゃ」
どろちゃんは散歩がてら、自分の大事な基地(お座布団)を抱えて、今よりほんの少しでも暖かそうな場所を求めて、夜のポ村を彷徨ってみることにしました。
ねこさんが暖まる場所。
「どこがいいきゃな?」
都会のねこさんは車の下、室外機付近、飲食店の近くなどで暖を取るそうですが、それらはポ村にはあまり存在しないので、森の方へ向かうことにしました。
「落ち葉にゃ。ふかふか落ち葉。ここ良さそうにゃ」
どろちゃんは落ち葉をかき集めて、モゾモゾと落ち葉の中に入っていきます。
「にゃふん、あったかいにゃあ」
安心してホコホコ暖まるねこさん。
しかしどろちゃんは、落ち葉の中にいる、自分以外の存在に気がつきました。
よく見るとと落ち葉の中には、先に暖まっていた虫さんたちが、寄り集まっていました。
「どろちゃん…お邪魔きゃな?」
どろちゃんは落ち葉の中から抜け出し、基地を運びながらトボトボとこの場を去っていきます。
どろちゃんはどうやって暖を取ったら良いのでしょう。
お友だちが多いねこさんは、お互いの体温で暖まったりするそうですが…
しかしどろちゃんの知り合いのねこさんは、にゃこさんくらい。
そしてそんなにゃこさんとは、犬猿の仲です。
だけどこんな寒い夜、やっぱりねこさんはぬくぬくしたい。
とってもぬくぬくしたい。
たまには仲良く。
ぬくぬく…
どろちゃんが一緒に寝ていたのは実はトウキさんなのですが、今は暖かければそれはそれで…
どうやらトウキさんはねこさんにとっての、ぬくぬくおこた代わりになりつつあるようです。