前回のお話
2022年4月から導入されたリフィル処方箋。
そのことについてマメチュー先生とイチイさんが会話をしていたところ、ねこ森町のねこさんたちが集まってきました。
「それにゃんのお話にゃ?むずかしい話にゃか?」
「聞きたいのか?」
「にゃ」
【リフィル処方箋】
一定期間内、回数内であれば、医師の診察無しでも医師及び薬剤師の適切な連携により、繰り返し利用できる処方箋のことです。
高血圧などの慢性疾患で、症状が安定している患者さん等に利用してもらう制度。
新薬、麻薬、向精神薬等の投薬量に限度が定められている薬は対象外です。
メリットとしては医療機関への受診回数が減る分、患者さんの負担が少なくなります。
さらに診察料等の医療費も削減できます。
デメリットとしては、症状の変化に医師が気付きにくくなることです。
「リフィル処方箋の肝はこのデメリットかな…誰も聞いてないけど」
ねこさんたちは遊んでいたり、いつものように眠り込んだりしています。
「しょうがねぇな。難しかったよな」
イチイさんはねこさんたちを優しく撫ででからそのまま眠らせ、マメチュー先生と再び真面目な会話を始めました。
「デメリットの話でしたよね。患者さんの症状が悪化したときに、医師が気付けなくなる」
「そうですね。今までよりさらに薬剤師のフォローが、必要になるのでしょうね」
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「そうなんです。だから俺はリフィル処方箋が日本で導入されたら、より薬剤師としてやりがいを得られるようになる、そう思っていたんですよね。でも…」
リフィル処方は海外ではすでに導入されていました。
アメリカ、イギリスでは薬剤師にも処方権があるので、薬剤師は日本よりもかなり責任のある仕事とされています。
しかし前回も説明しましたが、日本では医師会の反対によりなかなか導入されることはなかったのです。
医師会が反対する理由としては、通院回数が減ることによる医業収入の減少等があります。
「それでもリフィル処方が導入されたからには、薬剤師として責任を持って頑張らなければな、なんて思ってたんですけどリフィル導入には薬剤師側にも消極的な人間がいるみたいで」
そして医師側も、薬剤師に患者さんの健康管理を信頼して任せることに抵抗があるようなのです。
「そりゃあそうですよね。やる気のない薬剤師を信頼なんてできない。しかも医師である自分たちの収入も減ってしまうかもしれないのに。反対しますよね、そりゃあたり前」
イチイさんは下を向いて考え込んでしまいました。
「イチイさん、薬剤師としてこれからどうしていきたいですか?」
「これから…薬剤師として…」
にゃこさんは、安心安全地帯にいる時のように、イチイさんに身体を預けて眠っています。
「信頼されたいですよ。医師にも患者にも。うちの薬局にはやる気のない薬剤師はいませんが、それでもより責任を持って働く薬剤師として彼らを指導していきたいですね」
「そうですね。私たちにやれることをやりましょう。薬学的な知識をより付けて、患者さんの症状の変化にもいち早く気づけるような、そんな薬剤師になれるように」
「マメチュー先生はすでになっていると思うんですけどね」
「まさか、全然です。日々勉強です。かかりつけ薬局として信頼してもらい、継続的に利用してもらえる、そんな調剤薬局を目指しています」
「分かります」
“どんな優秀な薬剤師でも、日々勉強するのは当たり前だけど“
イチイさんは久しぶりにマメチュー先生に会って、薬剤師として改めてしっかり仕事をしようと思いました。
彼のように人の見本になるような、薬剤師になれるように。
マメチュー先生を見つめていたせいで、イチイさんの膝で眠っていたにゃこさんが転がり落ちてしまいました。
「にゃ」
「もう!なんにゃさ。危ないにゃにゃいの。もうお前のお膝ではねんねしないにゃ!」
にゃこさんお怒り。
「ごめんごめん」
「ぷん!もう知らんにゃわ」
「だからごめんて」
今のところはとりあえず、にゃこさんの信頼を回復するところから始まりそうなイチイさんでした。