ポ村には時折、強風が吹き荒れます。
「わぁっ」
「またすごい風吹いたっ!」
トビー君とペンネ君は、強風アンド寒さの中でも表ではしゃいでいました。
「ん?トビー君見て!
あんな所に…」
「ケイちゃん?何してるんだろう」
漢方医学で“風”は病気を発病させる要因の一つです。
(冷えや悪寒、落ちこみやすくなる等)
気候の変化が大きいと身体が対応出来ず、体調を崩しやすくなってしまいます。
とは言え人間はそんな“風”に負けてばかりはいません。
大きな風のチカラを利用し、ちゃっかり電力を作らせて貰っています。
そして子どもさんたちも風の子なので、ホントは寒いけれどお友だちと遊びたい気持ちが勝り“風”に負けること無く、お外ではしゃぎます。
「次なにしよっか?」
「ちんまり公園行く?」
「うん、ココアちゃんとか来てるかな?」
元気な子どもさんたちは、寒さと戦いながらも外でテケテケ走り回っていました。
「あれ?」
「ケイちゃん?!」
子どもさんたちは、仕事帰りのケイヒさんと遭遇しました。
今から行こうとしていた、ちんまり公園の方から現れたケイヒさん。
今さっき、見かけたばかりなのに何で?
「なんだよ二人とも。
ボンヤリしちゃって」
「ねぇ、ケイちゃん今さ…」
トビー君はさっき見かけた場所に、ケイヒさんが行っていたかどうか尋ねてみました。
「行ってねえよ?」
「うそぉ」
「あれ、ケイちゃんいつもの帽子は?」
ケイヒさんの帽子は、先ほどの強風で飛ばされてしまったのだそうです。
「そうなの?」
「そういえば、ケイちゃんの帽子被ってた奴。
服装も違ってたかも」
「俺の帽子、誰かに拾われたって事?」
では子どもさんたちが見かけた人は、誰だったのでしょう…
「そいつまだ見かけた場所にいるかもしれないから、取り返してきてあげるよ」
「にゃんま~」
「む?」
3人でお喋りしていた所に、にこにこしながら現れたにゃこさん。
「あれ?にゃこそれ…」
にゃこさんはケイヒさんの帽子を、握りしめていました。
「これお前のにゃろ?
にゃこさん知ってるにゃ」
「何だか分からんけど…
ありがとうにゃこ」
「にゃ!」
「にゃこ、この帽子どうしたの?」
「にゃ?
いつもよく眠ってる奴が持ってたにゃ。
にゃこさんと一緒にゃ。
ホントよく眠る奴なんにゃ」
「それ…ねこってこと?」
「えー!違うよ!」
「人だったよね?」
「何だ、何だ?
怖い話か?」
にゃこさんはトウキさんの事を、伝えているつもりです。
みんなが戸惑っている理由は分かっていないので、にこにこと見つめています。
帽子を届けてあげられて、にゃこさんはむしろ満足しています。
「村でよく眠っている奴?
ポ村に変質者でも紛れ込んだのか?」
にゃこさんの話を聞いて、3人はザワついています。
みんな成長すると都会に出てしまうので、ポ村には若い成人男性はあまりいないはずなのです。
どうやら3人とも、トウキさんのことを知らないようです。
トウキさんは村人と関わることがないので、彼の存在を知る人はとても少ない。
そんなザワついている時にふと、ケイヒさんは思い出した事がありました。
“寝苦しい夏の夜”
ポ村で見かけた見知らぬ若い男性。
もしかして…
そんな思いが頭をよぎりましたが、ケイヒさんは子どもたちには何となく伝えずにいました。
しかしケイヒさんの予想通り。
夏の夜に見かけた人物と、今回の帽子を被っていた人物は同一の人間です。
トウキさんはおそらく、飛んできた帽子を被ってみただけなのでしょうが、それを子ども達に目撃され、変質者扱いされてしまうことになったようです。
まさかそんな扱いをされてしまうとは…
知らぬは本人ばかりです。
ホントはこれがキッカケになって知人になり、お互いの人間関係が広がれば…
トウキさんの画風にも影響があるかもしれません。
そしてトウキさんの持病である頭痛の原因も…
分かるかもしれないんですけどね。