マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

ポ村のクリスマス その1

ポ村の中心部には、まるで村を守るように大きな御神木があります。


いよいよ年の瀬が迫って来た頃。


子どもたちが御神木のまわりに、集まっていました。



それは何故かというと、御神木に向かってお願い事をするためです。

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これはポ村の冬の風物詩。



クリスマスが近付いて来た頃、サンタさんへのプレゼントのリクエストを、子どもたちはここでするのです。



「今年のプレゼントは何をお願いしたの?」



「…そっちは?」


もじもじする子どもたち。


お願い事って人に言うのは、何となく恥ずかしいですよね。



なので子どもたちはみな、小さな声でこっそりお願いします。



こうやってポ村では、子どもたちにサンタさんがいる風を演出しています。


ポ村のサンタさんの正体は村長です。


子どもたちのお願いは、村長がこっそり聞いています。


地獄耳です。


そしてクリスマスイブになると村長がサンタさんに扮して、子どもたちの家にプレゼントを配っていくのです。


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実は子どもたちもそれは暗黙の了解で、サンタさんの正体が村長であることは気付いています。


演出までしてプレゼントをくれる両親・村長へのお礼をこめて、サンタさんを純粋に信じる子どもを演じるのです。


“やった~、サンタさんが来てくれたぁ”


子どもたちだって、大人に気を使って色々大変なのです。


だけど大人たちの喜ばせようとする努力は、子どもたちにとっても嬉しいものです。



本物のサンタさんじゃなくたって、嬉しいのです。



だからイブの夜は村長の為、両親の為、子どもたちは早くベッドに入り静かに眠ります。



そしてサンタさんが家の中に入りやすいよう、窓の鍵を開けておくのです。



ただ全ての子供が、サンタさんの存在を信じていない訳ではないようです。



「ポ村には本物のサンタさんは、来てくれないのかなぁ?

毎年バッサバサと村長が、プレゼントを届けに来てくれた音は聞こえてるけど…」



「やっぱりさ…
サンタさんはいないのかもしれないよ」


「そんなことないよ。

ポ村って分かりにくい場所にあるから、いつも迷って来れないだけだよ」


「そうなのかなぁ」


クリスマスイブにだけトナカイのソリに乗って、空を飛んでくるという白ヒゲのサンタさん。



ホントはその姿を見てみたい。



赤いお鼻のトナカイも一目見てみたい。


ひょっとしたらプレゼントを届けてくれた人が、村長ではなくサンタさんだった事が一回位はあったかもしれない。



寝ていて気付かなかっただけかもしれない。


「今年は見てみたいなぁ」


「どうやって見るの?」


「起きてる子の所には、来てくれないんじゃない?」


「サンタさんと会う方法を、教えてくれる大人なんていないよね」


サンタクロースがいようがいまいが、大人たちは幼い子どもには、本当のことをあまり言わないものです。



「靴下の中に入って、眠っている振りをして待つのは?

靴下の中で眠っちゃってても、絶対起きるよ!」


「でも靴下の中に入るなんて無理だよ」


「だけどどうしてサンタさんは、小さな靴下にプレゼントを無理やりねじ込むんだろう…」



「てんまちゃんが言ってたよ。

元々は貧しい人に金貨をあげるため、煙突から投げ入れてたのが始まりなんだって」


その投げ入れた金貨が、暖炉の上に干してあった靴下の中に、偶然入ってしまったのだそうです。



「ふうん、だから靴下なんだ」


「それが本当なら子どもの元にはサンタさん、来てくれないかもしれない」


「え?」


「だって貧しい人を助けるために、サンタさんはいるんでしょ?」


「……」



クリスマスイブ当日。



やっぱり子どもたちは、靴下の中に入ってサンタさんを待っていました。

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続きます