土壌を腐らせる、そんなポ村に巣くう悪しきものにも負けず、ようやく実ったポ村産の可愛い野菜たち。
「可愛いなぁ。抱きしめたくなるよなぁ」
農家のケイヒさんは、自分が育てて収穫した野菜たちを愛おしそうに見ています。
名残惜しいですが、商売なのでいつまでも眺めている場合ではありません。
段ボールに詰められたお野菜を、またもケイヒさんは見つめています。
「きれいだなぁ。宝石箱みたいやなぁ。なぁ!ヤマオ!聞いてる?」
「…」
ケイヒさん、黙って仕事に戻ります。
「ん?なぁヤマオ」
「…」
「なんか嫌な匂いしねぇ?」
そう、ケイヒさんに尋ねられたヤマオ。
たっぱのある彼が辺りを見回し、何かに気付き、ケイヒさんの後ろの方を指さします。
「え?あ!」
「奴らめ!ちょこちょこ野菜たちを腐らせに来んだよなぁ。全くけしからん」
悪しきものに対し、素早い対処のケイヒさん。
普段は怖がりな所がある彼なのですが、農作業中はいつでも強気です。
そもそも基本的に、悪しきものは成人男性を襲うことはあまりありません。
奴らは、土を腐らせて植物にダメージを負わせること等が好きなようです。
おそらく今回現れたのも、お野菜に対する嫌がらせでしょう。
「さ、残りの野菜はいつもお世話になっている人に配りにいくか」
出荷作業を終えたケイヒさんは、ポ村の人々にお野菜を配り行くことにしたようです。
続きます。