まだ空を飛べない子供の頃、ポ村に存在する不思議な生物と友だちだった。
当時は練習しても練習してもなかなか、空を飛ぶことが出来ない。
空への憧れに支配されていた心を、友だちの不思議生物が癒してくれた。
一緒にいると楽しくて仕方なかった。
ちょこちょこと動いている姿を見るだけで、笑顔がこぼれた。
母が言うにはその不思議な生物は、ポ村にしかいないのだという。
”そうなんだ”
「だったら早く大空を飛び回れるようになって、世界中のみんなに紹介したい」
そう思った。
きっと観光客がいないこの村にも、不思議生物目当てで人がたくさんやってくる。
おそらく彼らも皆、かわいい不思議生物に癒されるだろう。
自分と同じように。
仕事が休みのパゴロウさんはシフォンと一緒に遊んでいました。
シフォンのおかげで毎日が充実している様子。
シフォンも楽しそうにしていることが、パゴロウさんは一番嬉しい。
”この小さな命は、この子の小さな幸せは僕が守ってあげないといけないんだ”
「シフォン、今日もいいお天気だよ」
「ま!」
パゴロウさんにとってポ村での一番の娯楽はお散歩。
ポ村住民になるとみんなお散歩が好きになります。
「いいお天気ってことはお散歩日和ってことだよね」
「まー」
さっそくパゴロウさんはシフォンと嬉し楽しいポ村散歩。
にこにこと彼らは出かけたのですがー。
唐突に彼らに泥だんごをぶつけているのは、ポ村周辺をうろつく悪しきもの。
村の入り口にある鳥居が結界の役割を果たしているため、ほとんどの悪しきものはポ村に入り込めない。
だけど、たまにこうやってどこからか侵入してきてしまうものもいるのです。
彼らは腐ったような妙な臭いがし、土を腐らせ、そして人を見ると泥だんごをぶつけてくる。
腐った土で作った嫌な臭いの泥だんごを。
「なにこれ。シフォン大丈夫?」
「だ」
よその町からポ村にやってきたパゴロウさんには、悪しきものに対する対処の仕方が分かりません。
おかげで泥だんごをぶつけられ放題になっています。
それでもシフォンだけは必死に抱きかかえ守っています。
その時、泥だんごがパゴロウさんの顔にヒットしてしまいます。
「わっ!」
目の中に泥が入ったパゴロウさんは、痛くて思わず目を抑える。
その拍子にシフォンが腕の中から転げ落ちてしまいました。
「あっシフォン!」
悪しきものは転がり出てきた小さなシフォンにも、泥だんごをぶつけようとしています。
「やめてっ。シフォン逃げて」
続きます