マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

怖がり屋さん その11

前回のお話

ビビりで悩む小学六年生のヨモギくん。
ポ村小で開催される肝試しが嫌でたまらない。
でも女子に馬鹿にされたくないため、まずはビビり克服にチャレンジ。
トビーくんに特訓に付き合ってもらっていた途中、てんまさんに遭遇。
最近、恐怖心が薄らぐというトキソプラズマに感染した気がするという彼女。
包丁が足元に落ちてきそうになっても動じなくなったという。

「包丁、大丈夫だったんですか?ケガしませんでした?」
「うん、平気。ちゃんとよけたから」
「包丁、落ちたんだ」

「だからさ、私もトキソプラズマに感染していて、恐怖心が昔より薄らいでいるのかもしれないなって」
「恐怖心が無くなるのっていいことないですね」

「でしょ!そこだよ」

「えっ、え?」

「恐怖心が無くなるのってね、いい事ばかりじゃないんだよ。まだ自分自身がそうなのはいいとして、大事な人が恐怖を感じないタイプだと心配で仕方がないよ。危険な事ばっかりするんだもん。ヒーローのそばにいるヒロインにさ、うざったいほどと言うか邪魔なくらいヒーローの男の子を心配するタイプがいるじゃない? 私、分かるもの。その子たちの気持ち。女の子はさ、大事な人にね、ヒーローになんかなって欲しくないんだよ」

ヒロインの本音
「そうなんですか?強い男子に守って欲しがる女性も多そうですけど」
「そういう子も多いだろうけど。でも自分自身のことを顧みない彼のことをさ。ヒロイン自身が、悪い人から守ってあげたいって思うこともあるんだよ。この人のために私が強くならなきゃって」


「その思いを伝えると、お友だちのまゆさんには怒られるんですね」
「そうなんだよ。ひどくない?」

「まゆさんだってきっと同じように、てんまさんを守ってあげたいと思っているから怒るんですよ」
「そうかな?そーなのかなー?だったら嬉しー」

「今ドーパミン出ちゃっているかも。いやこの感情で分泌される物質はセロトニンかな?オキシトシン?」
「幸せになって、生きる意欲だけが湧いてくれればいいんですけどね」


「だよね。ドーパミンは多すぎても少なすぎても問題あるんだよ。トキソプラズマに感染した人は、統合失調症になる人が多いんだって。自殺者も多くなる」


「うひぃえぇ」


「だけど、ドーパミンが少ないのも困るから、お肉、お魚、大豆とか好き嫌いなく食べるといいよ」
「ドーパミンに影響があるんですか?」

「そうだよ。あー!


「なんですか?大きな声やめて下さいよ。びっくりするじゃないですか」
「噂のねこ」

「にゃああああ」

あれはさっき、トビーくんと木登りしながら遊んでいたねこさんだ。


「あの子はね、まゆちゃんに続いて私の大切なお友だち」
「そうだったんだ。木の上から降りれなくなっているみたいですね」
「そうなの。あの子いつもあれやるの。やれやれなんだから」


てんまさんは躊躇することなく、ねこさんがいる木の上に登っていく。
「にゃ?」
そして木の上で怯えているねこを、宝物のように大切に腕の中に抱えていた。


「かわいい子でしょ?にゃこちゃんっていうの」
「てんまちゃん、ありがとにゃ」

別れてからずっとこのねこさんは、木の上でおびえていたのだろうか?


「ねこ、こわい?」
「え?」
「トキソプラズマのこと」

続きます