マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

薬学生だった頃 その2

前回のお話

大学の一年先輩で、おなじ生物サークルだった、てんまさんは当時とても人見知りでした。




でも誰よりも早く警戒心の強いねこを懐かせ、てんまさん自身もねこに懐いていました。



一方まゆさんは…


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そのねこさんに、ガッツリ引っ掻かれてしまいます。


でもねこさんの対応に慣れているのか、全く動じません。

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「なにさ、オナモミとってやろうと思っただけなのに…」


(ねこさんを盗撮しようとは、していました)



「別にあんたの気を引こうとなんて、してないからね。

ご飯でつったりもしないしねっ」



“シャー”


何やらブツブツ言われ、ねこさんもお怒り。


居眠りしていたてんまさんも異変に気付き、目を覚ましました。



そしてケンカするねこさんとまゆさんを、眺めています。


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「子供の頃は、ねこにご飯をあげたこともあったけどさ」



“人間様のご飯を、ねこになんてあげないでよっ”


昔、ねこ嫌いの母親に言われた言葉。



“ああ?てめぇは何様だってんだよっ!?”



即座に言い返した記憶はある…




オナモミをイジイジしながらぼんやりしているまゆさんを、人見知りねこは逃げずに何やら観察していました。



引っ掻いてしまった部分を、見ているようでもありました。




「やだなにっ!?
まさかまゆもそのねこちゃんと、仲良くなったの?」



まゆさんの友人が驚いたように、声をかけてきました。



しかしその友人の大きな声にねこさんの方が驚いて、近くにあった木の上に逃げていってしまいました。

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ねこさんは大きな声が苦手です。


「あっ…ごめん…

でもなんか、まゆの前で寛いでたよね。
あのねこちゃん」


普段はすぐに逃げていくねこさんが、さっきまではまゆさんの前で少し寛いでいるようでした。



「でもそろそろ、午後の授業始まるよ」



「動物好きなら、大きな声出すのやめ!」



「ごめんって…」



午後の授業が始まるー。


なのにてんまさんは、木の上に逃げて行ったねこさんのことを見つめていました。



午後の授業終了後ー。



「あ~あたし、サーバルキャット飼いたい」



「?なにそれ?
餌にでもなんの?」



「ちがいますー。あれ?」



てんまさんが先ほどと全く同じ場所で、心配そうに木の上を見つめていました。


「にゃー…にゃー…」




そして助けを求めるような、か細いねこさんのなきごえも聞こえます。



(さっきのねこ…)



午後の授業が始まる前、まゆさんの友人の大きな声に驚いたねこさんが木の上に逃げていったのを思い出しました。



~♪~♪~♪



ねこさんの怯える声に、混ざるように小さく聴こえる歌声。



草木が揺れるリズムに合わせて…

雲が流れるスピードに合わせて…


こわがるねこさんを落ち着かせるように、歌を歌っています。



語りかけるような歌声。

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ねこさんの方は高所恐怖症の人が、バンジーでもやるような顔で震えていましたが、少しずつ落ち着いてきたようです。



ねこさんは高いところは好きなのですが、そこから降りるのは苦手なのです。



「大丈夫だよ。
ずっと待ってるから、落ち着いたらおりておいで」





直感が働いたまゆさんは、嫌な予感がして振り向きました。



「まゆー!あのねこちゃん助けてあげなよっ」


「…!」


先ほど大声に関して注意したばかりの友人が、再び大声を出しながらねこさんを見上げています。


まるで木の上にいるねこさんに、話しかけているかのような大きな声です。



ガサガサガサッ…



「えっなに?ねこちゃん
どしたの?」



やはり大声に驚いてしまったねこさんが、木の上から飛び出してきました。




ねこさんをずっと見守っていたてんまさんは、飛び出してきたねこさんを慌てて抱きとめようとします…が…


「あっ」



体勢を崩して、よろけてしまいました。



「あっぶなっ!」



それを見ていたまゆさんは、急いで支えにいきます。

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まゆさんは自分が下敷きになるように倒れ込んだので、てんまさんとねこさんは怪我もなく無事でした。



ねこさんの方は“にゃー”となきながら元気に逃げていく。



「良かった、元気そうじゃん」



下敷きになりながら呟くまゆさん、今度はてんまさんの方に話しかけます。


「あんたは?」


「あっ」


てんまさんは、下敷きにしてしまったまゆさんの上から転がるように飛び退いて行きました。



「もっ、もしかしてしっ…死…死…死…」



何やらまゆさんを圧死させてしまったのではと、パニクっています。



「死んでねーよっ!
喋ってんじゃん。

まぁ、捻挫はしたけどね」



てんまさんは勢い良く起き上がってきたまゆさんを見て、目を丸くして驚いています。




「えっえ…」




「あんたにつぶされたくらいで死ぬかよ。

アリじゃねえんだから」



「死なない…?
生きてる?」



「まだ生きなきゃな!
一応、これから薬剤師になるんだよ、あたしは!」 



「……。

!!捻挫!冷やさなきゃ!」



捻挫には炎症を抑える、鎮痛消炎成分が入っている外用薬を使用します。



「皮膚弱くないですよね。
安静にして下さいね」



「あたし、あんたの最初の患者?

分かったよ、安静にする」



「ごめんなさい。
ありがとうでした」


「いいよ別に、薬剤師さん」



翌日



「えええ?」


全く安静にしていないまゆさんを見かけ、固まるてんまさん。



まゆさんは捻挫をしていない方の足でケンケンをしながら、猛スピードでねこさんを追い掛けて行きます。

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「まてぇ。けが人に引っ掻きやがったな」



どうやらねこさんとまゆさんは、仲良くなったようです。


 
「…ホントに死ななそう」



てんまさんはクスクス笑いながら、嬉しそうにその様子を見つめていました。



まゆさんはあまり覚えていないようですが、おそらくこの一件が仲良くなったきっかけ。






「まゆちゃん抱っこにゃ~」



「あたしも~」



てんまさんとにゃこさんが、まゆさんを押し潰していました。

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「圧死させる気か?
仕事だって言ってんのに」



「だってまゆちゃん、アリンコじゃ無いから死なないんでしょ?」



「……太ったろ、お前」



「………」


「いてっ、つねんな」


「また二人して仲良くしてるにゃっ」


「仲良くなんかないしっ」



「にゃ?
それよか、てんまちゃんは太ったにゃ?」



「……にゃこちゃんもきらいっ」





これからも末永く安定して、仲が良さそうなお三方です。