マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

まゆとてんま

「にゃこも行くー!」


ポテテテテテッ



「ん?何にゃこ」



にゃこさんはお出掛けしようとするまゆさんの後を、慌てて追い掛けていきます。




「絶対一緒に行くにゃ!
今行くにゃ。すぐ行くにゃ」




“まゆさんに、置いて行かれる…”



そんな予感でもしたのでしょうか。



にゃこさんは必死にまゆさんの所へ、走って行きます。




「なんだなんだ、急に…
別に遠くへ行くわけでも無いのに」



「分かってんにゃ!
にゃこさんはまゆちゃんのことは、分かってんにゃ。

にゃこさんをひとりぼっちにする気なんにゃ」




「なにそれ、ひとりぼっちって…
何を勘違いしてるんだい?きみは」




「分かってるにゃ!
にゃってまゆちゃんは、てんまちゃんに会うのにゃしょ?」



にゃこさんはまゆさんの前で仁王立ちをし、目をつり上げながらたずねてきました。




「ああ…
一緒にご飯食べるだけだよ?」




「にゃこも行くっ」




てんまさんとご飯を食べるだけだと言っているのに、まだ目を三角にしながら立ちはだかるにゃこさんを見て、まゆさんは思い出した事がありました。




(そういえばてんまと会う時は、たまにこうなるんだっけ)





“にゃこさんうっとうしいバージョン”

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【てんまさんとケンカごっこ】



前にもまゆさんとてんまさんの仲間に、入れて欲しそうにしていたにゃこさん。




にゃこさんはてんまさんを好きではありますが、まゆさんをとられてしまいそうで嫉妬してしまうことがあるのです。



“まゆちゃんはにゃこさんを置いて、てんまちゃんの元に行ってしまうかもしれないにゃ”



にゃこさんはまゆさんとてんまさんが、特別に仲が良いことに気が付いてるので、そんな心配をしてしまうことがあるようです。

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(無理やり割り込んできます)



「まゆちゃん!」


「なにさ?」




「まゆちゃんとてんまちゃんは…
にゃこが生まれる前から、知り合いにゃの?」




「そうだねー、知り合いだねー」



「にゃむ…

いやにゃあー!」



「どうした、どうした?」



まゆさんはぐずるにゃこさんを、仕方なく抱っこします。




「にゃこの方がてんまちゃんより先に、仲良しなのがいいにゃー!」



後とか先とか…

そんなの実際は何の関係もないのに、にゃこさんは悔しくてないています。





まゆさんとてんまさんが知り合ったのは、にゃこさんが生まれる少し前。



二人が大学生の頃でした。




同じ薬科大の二人は、てんまさんがまゆさんの一年先輩。



「あっねこ!」




大学にいた懐かないねこ。


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まゆさんが初めて大学で見たてんまさんの印象は、その懐かないねこに似ている…
というものでした。


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「にゃこ、てんまはさぁ」



「にゃむ?」



「出会った当時は、今以上に人見知りでさ」



「んにゃ?」



にゃこさんには、あまりよく分からないみたいです。




「それなのに…なんで仲良くなったんだっけ?

う~~~ん…」



“仲良くなった理由”

まゆさんは思い出せないようです。



(なにかきっかけが、あった気がするんだけど…)





「心理学でいうザイオンス効果(単純接触効果)が働いたのかな?」



【ザイオンス効果】
何度も会うことで、好感度や評価が高まり、警戒心も薄れていく。




調剤薬局等の患者さんは、再来局してくれる事が多いので、徐々に心を許し、本心を話してくれるようになる場合もあります。




「ただあの頃の事でよく覚えているのは、大学にいた懐かないねこが、てんまにはすぐに懐いたこと。

てんまの方も、ねこには懐いていたな」




(ねこには心、開くんだ)



ねこに対しては心を開けても、人に関しては苦手なんだろうとは思った。



人を好きになるのが怖いというか…



とりあえず一人でいる方が楽そうに見えた。




きっと過去に何かあったんだろう…




昔、女が苦手な女友だちがいた。



理由は聞かなかったけど“女子校”に通っていたと言っていたので、そこで女たちに何かされたのかもしれない…



そう、人にはそれぞれの人生があって、色々な事情がある。




てんまさんとは、大学で同じ生物サークルだったまゆさん。



その中でいつも一人、てんまさんは生き物たちのスケッチをしていました。




「ホントあいつ嬉しそうに生き物を観察して、採集して触れ合って…

だけどサークルの飲み会には、絶対参加しなかった」



“そのうちさ、飲み会やろうと思うんだけどあなたもくる?”



“すいません。その日は予定があるので”



(その日ってどの日?)


まだ日程はきまっていないのに…



「ぷっ、あいつらしい」



「まゆちゃーんっ」



てんまさんが前方から、まゆさんの元にやって来ました。



「あれ?まゆちゃん、何にやにやしてんの?

にゃこちゃんもいるー!」



てんまさんはにゃこさんと遊びながら、まゆさんに笑顔をむける。

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懐かなかったねこが、いつの間にやらすっごく懐いていた。



「なんで今日はにゃこちゃん、突っかかってくるかな?」



にゃこはてんまさんにプイッとしています。




「まゆちゃん、だっこしてにゃ」



「あっあたしもー」



「にゃ!!」



「懐くのもほどほどにしてくれ…」

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「いやにゃー」


「いやぁ」



「密、密!接近禁止!!」



“せめて自分自身は、感染症にかからないようにしなくては”


こんなに引っ付かれては、みんなにすぐにうつってしまうことでしょう…



言うことを聞いてくれない皆を見ていて、そんなふうに思うまゆさんでした。