マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

怖がり屋さん その7

前回のお話

ビビリがコンプレックス、小学六年生ヨモギくん。
ポ村小で開催される肝試しが嫌でたまらない。
でも女子に馬鹿にされたくないため、まずはビビり克服にチャレンジ。
トビーくんに特訓に付き合ってもらっていた途中、人見知りしているてんまさんに遭遇。

しかしヨモギくんが、薬局の患者さんだと知ったてんまさんは、自分で描いたスケッチブックをチェックします。


「患者さんだったら顔を忘れないために、いつも似顔絵を描いているんだけど。ヨモギくん?のは描いてないみたい」
「そうなんですか?僕高い所が苦手で、薬局の丘もちょっと怖いので、お薬をもらったらすぐに帰ってしまうんです」

「ふうん。それでも見かけはすると思うんだけど。すごいね。素早いんだ。忍者みたい!ひょっとして走るの得意?」
「走るのは好きですけど…」

てんまさん、急に楽しそうにおしゃべりしている。
なにか気に入られること言ったかな?

「ヨモギくん。きみの絵描かせてもらってもいい?」
「てんまちゃん。ヨモギの絵を描くの?僕の絵はー?」
「トビーくんの似顔絵は、もちろんあるよ」


「どれ?これ?小っちゃい時のお顔だー。今のぼく描いてー」
「そうだね。トビーくんは成長期だものね。ヨモギくんもか。定期的に描かなくちゃね」


「ちょっと待って。ぼくこの後、ママとお買い物の約束してたー」
「トビーくんたら、振り回すんだから。ママ心配してるだろうから、早く帰った方がいいね。送っていこうか?」


「大丈夫だよ。僕もう1年生だから。じゃあ。先帰るねー」
「気を付けてね」

トビーくんは本当に飛ぶように、ぴょんぴょんと帰って行ってしまった。

ヨモギさんの絵を描くてんまさん
ほとんど初対面の人とふたりきりだ。
それなのに、そんなに緊張しない。

「ヨモギくんは高所恐怖症?」
「僕ビビりなんです」
「ビビリって…じゃあ地震雷火事…全部苦手?」

🐝 🐝 🐝
ブブーンっ…
「ん?」

「…大丈夫?」
「すいませんっ。大丈夫です。えっとあの、昆虫も爬虫類も暗い所も怖い話も病気も、全部苦手です」

もう虫行ったかな?
僕はまたびくびくしながら、周囲を見回している。

ヨモギさん、再びチラ見 | •ㅿ•̀ )チラ

「え?」
「これおいしいんだよハーブティー。マメチュー先生お手製。リラックスするんだって。ほら、顔をこっちに見せて座って?絵描けないでしょ?」
「あ、はい」

てんまさんは僕の方を見ながら、真剣な顔で描いている。

長い沈黙。

「僕…ホントに怖がりで、今度のポ村小学校の肝試しも行きたくないんだけど、クラスの子に”行くでしょ”なんて言われちゃってて」
「それ女の子?ひひ。モテるじゃん。無理しなくってもいいのに。大人になってもさ、それこそ格闘家の強い男の人でも怖いものはあるんだよ。こわいものはあっていい」


「うん。それは分かってるんですけど」
「あら?生意気なお返事」

てんまさんは顔をしかめていたけど”すぐにそんな返しするなんて、頭いいんだね”とにこやかに笑っていた。


「だけどちゃんと怖がってくれないと、困るものってあるんだよ。」
「困るもの?」

続きます