前回のお話
ビビリがコンプレックス、小学六年生ヨモギくん。
ポ村小で開催される肝試しが嫌でたまらない。
でも女子に馬鹿にされたくないため、まずはビビり克服にチャレンジ。
トビーくんに特訓に付き合ってもらっていた途中、人見知りしているてんまさんに遭遇。
しかしヨモギくんが、薬局の患者さんだと知ったてんまさんは、自分で描いたスケッチブックをチェックします。
「患者さんだったら顔を忘れないために、いつも似顔絵を描いているんだけど。ヨモギくん?のは描いてないみたい」
「そうなんですか?僕高い所が苦手で、薬局の丘もちょっと怖いので、お薬をもらったらすぐに帰ってしまうんです」
「ふうん。それでも見かけはすると思うんだけど。すごいね。素早いんだ。忍者みたい!ひょっとして走るの得意?」
「走るのは好きですけど…」
てんまさん、急に楽しそうにおしゃべりしている。
なにか気に入られること言ったかな?
「ヨモギくん。きみの絵描かせてもらってもいい?」
「てんまちゃん。ヨモギの絵を描くの?僕の絵はー?」
「トビーくんの似顔絵は、もちろんあるよ」
「どれ?これ?小っちゃい時のお顔だー。今のぼく描いてー」
「そうだね。トビーくんは成長期だものね。ヨモギくんもか。定期的に描かなくちゃね」
「ちょっと待って。ぼくこの後、ママとお買い物の約束してたー」
「トビーくんたら、振り回すんだから。ママ心配してるだろうから、早く帰った方がいいね。送っていこうか?」
「大丈夫だよ。僕もう1年生だから。じゃあ。先帰るねー」
「気を付けてね」
トビーくんは本当に飛ぶように、ぴょんぴょんと帰って行ってしまった。 ほとんど初対面の人とふたりきりだ。
それなのに、そんなに緊張しない。
「ヨモギくんは高所恐怖症?」
「僕ビビりなんです」
「ビビリって…じゃあ地震雷火事…全部苦手?」
🐝 🐝 🐝
ブブーンっ…
「ん?」
「…大丈夫?」
「すいませんっ。大丈夫です。えっとあの、昆虫も爬虫類も暗い所も怖い話も病気も、全部苦手です」
もう虫行ったかな?
僕はまたびくびくしながら、周囲を見回している。
ヨモギさん、再びチラ見 | •ㅿ•̀ )チラ
「え?」
「これおいしいんだよハーブティー。マメチュー先生お手製。リラックスするんだって。ほら、顔をこっちに見せて座って?絵描けないでしょ?」
「あ、はい」
てんまさんは僕の方を見ながら、真剣な顔で描いている。
長い沈黙。
「僕…ホントに怖がりで、今度のポ村小学校の肝試しも行きたくないんだけど、クラスの子に”行くでしょ”なんて言われちゃってて」
「それ女の子?ひひ。モテるじゃん。無理しなくってもいいのに。大人になってもさ、それこそ格闘家の強い男の人でも怖いものはあるんだよ。こわいものはあっていい」
「うん。それは分かってるんですけど」
「あら?生意気なお返事」
てんまさんは顔をしかめていたけど”すぐにそんな返しするなんて、頭いいんだね”とにこやかに笑っていた。
「だけどちゃんと怖がってくれないと、困るものってあるんだよ。」
「困るもの?」
続きます