マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

怖がり屋さん その9

前回のお話

ビビりで悩む小学六年生のヨモギくん。
ポ村小で開催される肝試しが嫌でたまらない。
でも女子に馬鹿にされたくないため、まずはビビり克服にチャレンジ。
トビーくんに特訓に付き合ってもらっていた途中、てんまさんに遭遇。
彼女は大好きなまゆさんには、もう少し怖がりで会ってほしいと願います。


「まゆちゃんには、恐いものなしで立ち向かってほしくない。命がけの挑戦とかもしてほしくない。命をかけて人を助けてたしりしてほしくないの。
命ならわたしがかけるから、安全な所で大人しくしていてって思っちゃう。わたしはね。守ってほしいんじゃなくて、守ってあげたいの。命を懸けてまゆちゃんを守ってあげたい。そんなこと言ったらね」

「なんて言ってさ、怒ってた」
「ほんとに気が強いんですね」


「よし!」
「え?」

「出来た」

“頑張り屋さん、そんけー…”


「ねぇ、ヨモギくん。ポ村で肝試しがあるじゃない?一緒に行かない?わたし、ちょっと行きたかったんだ」

「え、え?まだ、やっていないはずですけど。」
「プレオープンっていうか、内々の人向けにおためしでやっているみたいだよ。マメチュー先生が村長から聞いたって。ほら、それ用のチケット」

「え?ええええ!」

心の準備もなく、ぼくはお化け屋敷に連れていかれてしまった。

お化け屋敷へようこそ👻

真っ暗。それはきっと目をつぶっているから。

やだなぁ。こわい…。
てんまさん。

僕がお化け屋敷苦手なの、分かってると思うんだけど。

こわいこわいこわい!
こわいこわいこわいこわいこわいこわい…


ずっとてんまさんの裾を握りしめていた僕。
そのせいかお化け屋敷の中で、てんまさんが立ち止まったのが分かった。

何か怖いものがあって、前に進めないのだろうか?

「…」

「…れい…」

「ぎひいいいぃっ」

僕は変な叫び声をあげる。

ん?今、なんか言った?
何?

「きれい」
「!!え?」

きれい?
お化け屋敷という場所には、そぐわない感想がきこえる。


「見て!ヨモギくん」
僕はその声に反応し、思わず目を開けてしまう。

「ほんときれい。ねぇ、このひと美人じゃない?」
てんまさんはうっとりした顔で何かを見つめていた。

「この幽霊ね、有名な画家のトウキさんって人が描いてるんだって。どんな人なんだろう。わたしこの人の絵好きなんだ」


そう言われて、僕もその絵をおそるおそる見てみる。

幽霊画

「じつはこの絵を見るのが、すっごく楽しみだったの」
「たのしみ?」

怖い絵のはずなのに、そう言われると芸術的な絵画のように見えてきた。
もう一度ちらっとてんまさんを見ると、まだ熱心に幽霊画を見ている。

「はぁ、きれいだなぁ」
”まだ言ってる。ここで立ち止まる人って普通いないよね”

でもこうして暗闇で絵画を見ていると、不思議と恐怖が消えていくようだった。何しろ一人で怖がっていること自体、馬鹿みたいに思えた。

「幽霊っていう存在になるには、物憂げで線が細い人しかだめなのかなぁ。わたしの主観だけど、幽霊って色白で美しい人が多い気がする」

“確かに色黒イケイケの幽霊とか、お喋り幽霊、マッチョ幽霊、怒りっぽい幽霊とかのイメージは無いかも…”

「あ、明るくなった。もう出口だね」
「え?」

初めてのおばけ屋敷、あっという間に終わってしまった。

「やっぱり怖かった?」
「ああ、ええと…思ったよりは怖くなかったです」

「よかった。わたしさぁ、子どもの頃に比べて、恐怖心が無くなってきている気がするんだ」
「大人になったからですかね」

「あのね」

てんまさんは少し声をひそめながら言った。

続きます