前回のお話
前世ゴキブリだったと語る占い師、ソヨウさんとお話をしていたてんまさんとにゃこさん。
ゴキブリ時代に好きだった少女に掃除機で吸われ、その中で少女の髪の毛を食べて過ごしていたソヨウさんは現世でも髪の毛が大好き。
そこでてんまさんに、髪の毛をもらえないかと申し出たところ断られてしまいました。
「髪の毛のことはごめんね。でもゴキブリの話なんだけど、知ってる?ゴキブリの脳から細菌に効果がある抗生物質が見つかったんだって」
「にゃ」
「ほほう、そうなのですね。ふふ。不潔で、誰からも嫌われるゴキブリでも、役に立つことはあるのですね」
「あたしも実はね、森の中で暮らす、まんまるいゴキブリは好きだよ。
一部、子育てするゴキブリもいるんだってね。
家の中で見かけるゴキブリは赤ちゃん時代からすでに、猛スピードで走り回ってたりしてるけど。ちっちゃいのに自力で生きて、逞しいなぁとは思ったりしているよ。
私が一緒に暮らしているみつばちはお姉さんたちが、赤ちゃんを育てるから。
だけどゴキブリってお手々をミイラみたいに交差してひっくり返っているから、亡くなっているのかなと思ったら、触覚だけまだピコピコ動いているのを見るとさ。やっぱり怖くなっちゃう…」
「死の間際まで触覚を使って、周りの様子を観察してるんですよ。
そういえばゴキブリ以外の昆虫からも、お薬が見つかることもあるんですかね」
「うん、そうだね。見つかるかもしれないね。逆に危険な細菌が見つかる可能性もあるけど」
「ああ、確かに」
「私ね、好きな画家さんがいるんだ」
「ポ村で暮らしているという、噂の有名な画家さんですね?」
「にゃ」
「そう。どんな人なのかは知らないけど、その人の宇宙の絵を見ているとね。そこに描かれている星々の中で暮らす、生物たちのことを想像をしちゃったりするのね。文明を持った宇宙人とまではいかなくてもさ、その惑星や衛星の中から新たな細菌くらいなら、見つかるかもしれないなぁって思うんだ」
「隕石の中にも、いるかもしれないですものね。細菌」
「うん。細菌からも薬って作れるから」
「なるほど。では地球上のものでは作れなかった、画期的な秘薬も作れるかもしれないってことですね。夢が広がるお話ですね」
「どうかな、どうだろう」
「ああそうか。危険な細菌が見つかる可能性もある…のですものね」
「将来、エイリアンと壮大な宇宙戦争を繰り広げるんじゃなくて、宇宙の小さな生物にいつの間にか倒されちゃっているかもしれない」
「それは怖い。でも次に生まれ変われるとしたら、その宇宙を漂う細菌になってみたいです。果てしない宇宙を、長い時間かけて浮遊できるような細菌に…」
「いいね。いつかまたずっと先の世界で出会ったら、その細菌時代のお話を聞かせてね」
「もちろんです」
「にゃこにも」
「はい」
今回は、ゴキブリで盛り上がる三人のお話でした。