マメチュー先生の調剤薬局

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ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

歯茎が痛い話 その2

前回のお話

歯茎が腫れて痛いのになかなか歯医者に行こうとしない、パゴロウさんのいとこのフリゼさん。

パゴロウさんは歯医者に行くよう勧めているようです。


「歯茎が腫れててずっと気になっちゃってるんだけどさ。そのままぎゅーって噛んで腫れた歯茎潰したらどうなるのかな?って思ったことない?緩衝材のプチプチみたいにペコっとへっこんでくれないかなぁ?」

「恐い事いわないで。ホントにやらないでよ?」


「細菌が原因だったとしたら、潰しちゃうと細菌が漏れ出てくる?胃酸と細菌ってどっちが強い?」

「変な事ばっかりいうんだから」


「痛いのを紛らわせてるの。何がつらいって歯茎が痛いと、大好きなお肉が食べられないのがつらい。腫れてる自分の歯茎肉を感じても楽しめないでしょ?」


「今度は気持ち悪いことを…」


「ホントはへっこますよりはさ。たんこぶ作ったときも思うけど、腫れた部分をポコっととっちゃいたくなるんだよね。で、並べて過去どういう場合に一番腫れたのかを比べっこする」

「悪趣味っていうんだよそれ」


「爪とっといたり、日焼けして剥けた皮をとっとくよりは良くない?」


「全部良くないと思うよ。結局歯茎が腫れた原因はなんだったのさ」


「ああ、原因ね。親知らずだったみたいだよ。」


「親知らず!?」


「実際、歯が生えてきてたしね。それにだいぶ後のことだけど、はっきり歯医者に言われたから」


「ずいぶん、親知らずが生えるの早かったんだね。12歳だったんでしょ?」


「そう。ずっと歯が痛くてさ、口の中の様子ばっか見てて。なんだか歯茎が白くなってきたなって思ってたの。んで、小学校で授業を受けてたら、口の中に突然何かが現れたの」


「口の中に?なにそれ?怖い話?」

「その何かを舌で転がしてみたら、なんだかソーセージみたいで。食べてないのに。」


「突然口の中にソーセージ?どういう類の話?」


「それを出してみたらさ」

「うん」

「歯茎だった」

「…歯茎…」


「腫れてた歯茎がポロっととれたみたい。歯茎がとれた部分を見てみたら歯が出てきてた」


「歯茎ってとれるんだ?」


「うん。とれた。ポロっと」


「じゃあ、今回は他の親知らずが?」


「もう親知らず全部生えてる」


「やっぱり早く病院へ」


「ああ、うん。そうだよね。考えとくー」


「…」

「病院」

「うん」

「今回、歯茎が腫れた原因気にならない?」

「ねー、ほんとだよねー」

「やっぱり、マメチュー先生と僕はちがうなぁ」

「え?だれだって?」


「なんでもない」


たくさんお話を聞いたのに、いとこのフリゼさんを歯医者に行く気にさせる事が出来なかったパゴロウさん。


過去に自然に治った経験とかがあると、病院嫌いの人は似たような症状が再び出てもなかなか病院に行こうとはしてくれません。


患者さんに信頼してもらって、説得する。


それがとても難しいということを、実感してしまったようです。


「手ごわいなぁ。どうしても物語の主人公みたいにかっこよくならない。説得できないまま終わりましたなんて、ドラマの中じゃないよなぁ」



「なんだって?」

「なんでもないよ」

「ふぅん。あ。ジュース飲む?」


「…飲む」